日本財団 図書館


呼吸苦のために歩行が困難で車椅子を使って行くが、それが生き甲斐で自宅でできるだけ過ごしたいと思っていた。しかし家事をこなす体力はなく、夫も仕事で忙しかったので、食事は宅配サービスで届けられたお弁当一食分を、2食に分けて食べる状態だった。掃除や洗濯もできないことがとても気になっていたが、自宅のトイレに行くのも呼吸苦のためにつらい状態だったので家事を行うことはできなかった。

 

訪問看護を依頼され、初回訪問時にこのような状態であることが分かったが、対策をたてる前に病状がさらに悪化してしまい、緩和ケア病棟に入院し、僅か2週間後に亡くなった。Cさんが緩和ケア病棟に入院したときに最も強いショックを受けたのは、教会の牧師や信者の友人達であった。車椅子で教会に訪れていても、その時に元気そうにる舞うCさんの様子から、これほど急に死を迎えるような重症であることは予測できなかったのである。日本の現状では、36歳のCさんが活用できる社会資源は殆どない。

 

しかし、教会の仲間達が実状を知っていたら、きっと日常生活のための援助を惜しまなかったと思われる。そのような関わりをするチャンスが教会の友人達に与えられていたら、喪失予期悲嘆を共感しあったり、信仰に支えられた深い人間関係をもつことができたであろう。それがCさんのためだけでなく、友人達のためにも貴重な体験を与えることになったと思われる。緩和ケア病棟入院後に面会に訪れた教会関係者の心理的動揺に対応するのが、最も大変だったと緩和ケア病棟の婦長が話した。訪問看護婦は、日常生活の営みを補完するためのマンパワーを見つけるなどの、いわゆる「マネージメント機能」ももっている。ソーシャルワーカーが少なく、その役割も現状では訪問看護婦がカバーしなければならない。

前述の訪問看護対象者の条件の中に「日々の暮らしを維持するために社会資源の導入を必要とする場合」という項目も加えなければならないと考える。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION