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(1) 在宅ホスピスケア対象者の条件

今回の6名の対象者について、訪問看護が必要であると考えられた条件は以下のようであった。

 

1] 病状悪化が予測される状態である

2] 症状コントロールの調整が必要、また今後苦痛な症状の出現が予測される

3] 本人あるいは家族が、苦痛症状や病状悪化を認識する能力が不足している

4] 在宅生活を行うことに本人や家族が強い不安を感じている

5] 退院後の医療の継続が困難な条件がある(通院距離が遠い、医療を継続する意識が弱い、通院時の介助者が得られない、経済的理由により通院困難)

6] 家族関係に問題があり、適切な介護が行われないかもしれない不安がある

7] 独居者、あるいは日中一人で生活するため、急変時の対応ができない

 

外来通院をしている場合、病状について判断することは可能であるが、体力低下が日常生活に与えている影響はわかりにくい。家族は介護のほかに仕事をしなければならなかったり、家事もおこなわなければならないので忙しい。また訪問看護婦の役割に対する理解も、看護婦間でも十分認識されているとはいえない。そのために訪問看護導入の時期が手遅れになる場合もある。

 

今回のCさんの場合(訪問看護期間1週間)がそうである。顎下腺がんが肺に転移し、呼吸苦がかなり強くなっていた。緩和ケア外来には家族が付き添って2週間に一度通院していた。Cさんは36歳の家庭の主婦であり、夫と二人の核家族であった。比較的近くにCさんの実家があり、母が時々家事を手伝いに訪れていた。しかし父親が脳梗塞のために半身麻痺で手が掛かるため、そうたびたび母もCさん宅を手伝うわけにはいかなかった。

Cさんの夫は自営業を行っており、事業がかなり苦しい状態だっために仕事を休むことができなかった。Cさん夫婦は熱心なクリスチャンで、日曜日ごとに教会に行き、礼拝に参加するとともに友人達に会うのをとても楽しみにしていた。

 

 

 

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