退院に向けての準備段階で、ホスピスケア・緩和ケアの理念に基づき、できるだけ患者と家族に負担をかけない方法で問題に対処するように医療処置の方法を変更するなどの配慮が必要である。現状ではまだ病院で行われていた医療処置を、在宅に移行するときも特に検討しないまま継続し、そのために訪問看護が導入される傾向がまだかなり強いのではないかと危惧される。
(6) 初回訪問時問題点のAステーションとBステーションの比較
1] 「訪問看護対象者」の初回訪問時およびその後のプロセスにける問題点が緩和ケア病棟がない地区ののAステーションの方が多かった
問題点は主に病状の進行にともなう各種の身体症状に関連するものであった
図15-1、図15-2のように、Aステーションの方が初回訪問時およびその後のプロセスにおける問題点が多く見られた。問題があるという認識(アセスメント)は各訪問看護婦の判断によるものである。データーに基づく判断とはいえ、両ステーションの問題数を単純に比較することに無理があるかもしれないが、実態調査上では図のような相違が見られた。Aステーションが存在する県には、当時緩和ケア病棟はなかったしがん専門病院もない。一方Bステーションは、がん専門病院内の緩和ケア病棟に所属している。したがって、退院して自宅療養に移行する場合には、症状コントロールが十分に行われていたとも考えられる。そのことがAステーションとBステーションの身体的な問題数の差に影響を与えていたのではないかと思われる。
図16-1図、16-2のように、死亡時(病院死の場合は再入院時)から遡って問題点のあり方を見ると、やはりAステーションの訪問看護対象者の方により多くの問題があった。Bステーションの在宅患者の往診は、緩和ケア病棟の医師が行っている。したがって症状コントロールが行われやすいと思われる。しかしAステーションの往診医は、各患者のかかりつけの地域の医師であるため、症状コントロールなどへの対応に困難があったと思われる。