(3) 訪問看護期間が長い患者の場合に再入院期間が短い
図3のように、訪問看護実施期間が長い患者の方が、再入院後の在院期間が短い傾向が見られる。がん患者の病状が安定していたことがより長く在宅することを可能にしたと思われるが、訪問看護でのサポートの存在がいろいろな問題への対処をしやすくし、可能な限り長く在宅を続けることを可能にしたと考えられる。したがって入院期間も短くなったと思われる。
(4) 自宅で死を迎えた患者に対する訪問看護期間と対象者の年齢とは相関しない
男性および女性のいづれの場合にも(図4、図5)年齢と訪問看護実施期間とは全く相関していないことが分かる。在宅ホスピスケアで対応する問題は、高齢者に現れやすい運動機能障害の程度(Performance Status)等に関することより、がんの病態に伴う様々な問題への対応が中心になる。したがって訪問看護者選択の視点を、他の疾病や高齢者の場合とは異なることを認識し、検討する必要があると考える。
(5) 訪問看護開始時の患者・家族の問題
初回訪問時に患者および家族にみられた問題をみると、以下のような特徴があった。
1] 患者の問題はがんの病態に関連することが多かった
表1を用いてのアセスメント結果では、図5のように#3認識・知覚(疼痛その他の症状コントロールに関する問題)が最も多かった。それについで#1呼吸・循環(呼吸に伴う障害、日常生活への影響、セデーション等に関する問題)および#4栄養・代謝(食物および水分摂取の問題、口腔粘膜の損傷、嚥下障害や誤飲、嘔気、褥創 等)、#5排泄(排尿・排便に関する問題)など、がんの進行に伴う身体への影響に関する問題が訪問看護開始当初に存在していた。
また#11自己認識・自己概念(恐怖、不安、無力、絶望、孤独感、他)などの精神的問題や、#13 法的問題・経済(死を迎える場の選択、死の迎え方、葬儀という死を迎えることに伴う問題)も、比較的早い時期からあることが分かった。