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(1) 各患者に対する訪問看護が10週間(中央値9週間)前後が大半でありそれほど長くない。そのために「在宅ホスピスケア」だけで訪問看護ステーションを運営するのは現状では経済的に困難である。

 

いわゆる脳卒中後遺症をもつ患者や神経難病の患者の訪問看護は、数年あるいはそれ以上に及ぶ長期間の関わりになる場合が多い。それに比較して、本研究のがん終末期患者の場合は2〜3ケ月が最も多かった。

これはがん終末期患者の場合に、病状の進行速度が早いために関わる期間が短いという理由もある。しかしまた訪問看護の必要な期間が短いというより、訪問看護対象者の把握が適切に行われていないために、訪問開始時期が遅れているという問題が潜在していることも考えられる。その理由については後述する。

また訪問看護実施期間が短いということは、在宅ホスピスケアを標傍し、がん終末期だけを対象とする訪問看護ステーション運営が困難であるという問題にもつながっていることが本調査により再確認された。現状では在宅ホスピスケアにおける訪問看護も、訪問看護回数をもとに医療保険から支払われる収入だけに依存している。その支払い条件は、他の疾患の場合とほとんど同じである。(老人訪問看護ターミナルケア療養費、訪問看護ターミナルケア療養費が支払われるというという条件はある)。がん終末期患者の訪問看護が比較的短期間で終結するため、経済的に訪問看護ステーションの運営を可能にする患者数を常時確保するのは、かなり努力が必要である。特にAステーションのように単独独立型の訪問看護ステーションは、自立運営できるための対象者を常に確保する必要がある。Bステーションのように病院機能の一つとして位置付いている訪問看護は、収入の不足分を病院が補完する形で運営されている。

 

(2) 在宅ホスピスケアを行った対象者の自宅での死亡率がきわめ高い

がん患者の自宅での死亡率は一般的に10%以内であるが、本調査で訪問看護を受けた対象者中、自宅で死を迎えることができたのは63.3%であった。これはがん終末期患者への訪問看護体験が多いことが、最後まで在宅を継続することを可能にしたと考えられる。このことから、在宅ホスピスケアを推進するためには、訪問看護婦のがん終末期患者とその家族への対応能力を高めることが有効であると考えられる。

 

 

 

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