日本財団 図書館


II 前オランダ・オンブズマン、前国際オンブズマン協会会長マーティン・オースティン(Marten Oostining)博士による基調講演「オンブズマン:その役割と発展の国際と比較」を伺って

 

マーティン・オースティン博士はオランダのナショナル・オンブズマンとして12年間、また、国際オンブズマン協会会長として4年間重責を果たされた方であり、豊富な経験と見識をお持ちの方である。このような方の講演を聞く機会を得られたことは光栄であった。

マーティン・オースティン博士(1943年11月11日生)は、ナショナル・オンブズマンに任命される以前にはオランダのグローニンゲン大学法学部において、行政法を担当する正教授として教鞭をとられており、また、政府の様々な諮問機関の議長も務められていた。

1987年から1999年まで、2期12年にわたってオランダのナショナル・オンブズマンを務められ、その間、1994年から1998年まで国際オンブズマン協会(略称「IOI」、オンブズマンの世界組織)の会長も務められた。現在、元会長としての立場からIOI理事会の顧問に就任されている。さらに、国立行政研究所理事長、世界野生生物基金理事会オランダ支部副理事長、ハーグ社会研究所理事をも務めておられる。

博士の著作は、主としてオンブズマンの職務の様々な側面や、国民と政府との関係、行政組織と政府間関係及び制定法の評価を扱ったものである。

マーティン・オースティン博士は、その略歴を見ても分かるように、世界の著名なオンブズマンの一人として研究業績も豊富であることから、講演内容は世界のオンブズマンの動向にはじまり、オンブズマンの一般的な特徴(独立性、調査権、アクセスの容易性等)、博士が独自に編み出されたオンブズマンのタイプ別分類、日本の行政相談制度についてのコメント、オランダのオンブズマン制度の紹介、最後にオンブズマンの課題に至るまで非常に有益であった。したがって、「まとめ」の文面が少し長くなってしまった。

以下、基調講演での重要な部分を紹介させていただくこととする。

 

1 オンブズマン制度の主要な特徴

(1) 歴史的沿革の中でオンブズマン制度が発展した。

日本の行政相談制度が創設されたのは1955年であった。同じ年に、45年前にデンマークが、1809年スウェーデン、1919年フィンランドに続き、オンブズマンを整備した世界3番目の国となった。そしてデンマークがさきがけとなり、この制度が世界中に普及した。1973年には、ヨーロッパ6か国を含む世界10か国がナショナル・オンブズマンを整備しており、さらに、4か国が自治体オンブズマンを開設した。それから10年後の1983年なかごろとなると、オランダも含めて21か国がナショナル・オンブズマンを任命しており、自治体オンブズマンを運営する国もさらに6か国増えた。それ以来、この制度は飛躍的に発展した。現在80か国以上が国あるいは自治体のレベルでオンブズマンを整備した。1995年9月1日、欧州連合は世界初の超国家的オンブズマンを整備したのである。わずか数十年の間に、世界中でオンブズマン制度が整備されてきた。過去10年〜15年、中東欧諸国、ラテンアメリカ諸国でもオンブズマンが任命された。こうした国々は、全体主義支配の終焉を迎え、新しい民主的秩序の建設という課題に直面した。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION