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特に興味をいだいたのは、総務庁長官官房審議官塚本壽雄氏(国側の立場で)及び中部行政相談委員連合協議会会長谷昇氏(行政相談委員の立場で)が、それぞれの立場でご報告された行政相談(委員)制度の現状と課題の中での実績報告であった。すなわち、平成10年度における行政相談の総受付件数が約227,000件あり、そのうち約70パーセントが行政相談委員が受け付けられたものであること、また、同年度内で処理した件数も約227,000件(このうち中部地区分は約27,000件)あり、そのうち苦情事案は約50,000件(中部地区は約3,300件)で、その内容は道路、生活衛生・廃棄物、社会福祉関係等国民生活に身近な問題全般にわたっていることである。このように多くの、国民生活に密着した苦情を解決するために、行政相談委員の方々をはじめ、行政相談を担当されている行政監察局の職員の方々が日々努力されていることについては、只々敬服の限りである。

さらに、新たな苦情類型への対応として男女共同参画、介護保険等をあげておられた。男女共同参画に係る問題が、行政苦情救済の面でどのように扱われるのかということについては、人権を研究している者としては興味をもっているところである。また、介護保険については、パネリストの一人である日本福祉大学社会福祉学部教授後藤澄江氏も、「少子高齢化が進むなかでの新しい福祉理念と行政苦情救済活動への期待」の中で触れておられた。

もう一つ興味をもったのは、行政相談委員の方が「行政相談委員は、市民の協力・信頼を得ることが一義であり、私は、人と人との関係は『あいさつ』ではじまり『あいさつ』で終わる、と考えている。それが出来なければ到底、信頼関係は生まれない。私は、このことを常に心掛けている。」と言われたことである。私も、ゼミ生にそのように指導しており、間違いではなかったとあらためて思っているところである。また、行政相談委員の方が、質の高い仕事をすべく、総務庁が行われる研修のほかに、委員同志が自主的に体験学習の交流を図るなど努力されていることを知り、感銘を受けた次第である。

第2は、海外のオンブズマンの活動の現状や課題について、直接オンブズマン自身からお聞きすることがいかに意義深いことであるかということを、今回、主催者がオランダから招聘された方の基調講演を拝聴して実感することができた。

毎年、色々な国のオンブズマンをお招きすることについては、主催者も大変ご苦労があることと思われるが、やはり、フォーラムの開催を意義あるもの、とするためには必要なことではないかと考えられる。今回の招聘者は、鎌田理次郎会長のご紹介によれば、来日される1か月前までオランダのナショナル・オンブズマンであり、前年まで国際オンブズマン協会の会長をされていた、マーティン・オースティン博士であった。博士は、「オンブズマン:その役割と発展の国際比較」と題し、基調講演(この講演の概要は次章で紹介)を行われたが、その内容は、豊富なご経験とご見識に基づいており、感銘していたところ、その後の懇親会において直接お話することができ、氏の知識の奥深さを認識し再度感銘した次第である。

 

 

 

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