平山局長:もう時間もせまってきましたが、オースティンさんの、丁寧な、分かりやすいご説明で、私どもも、オランダのオンブズマンの制度がよく分かりました。また、今後の私どもの行政相談活動にとって、非常に有意義なサゼスションを頂きまして、本当にありがたく思っております。
最後に、時間がなくて恐縮ですが、鎌田会長から本日の意見交換会のご感想がございましたら、お願いいたします。
鎌田会長:風土も違う、統治構造も違う、そして歴史も違う中で育ってきた私ども日本の行政相談委員制度について、オースティン氏が深い理解を示していただけたことに対し、私は大変感謝いたしております。
私も、名古屋の先生方とこうしてお目に掛かる機会は滅多にございませんが、今日は、行政相談制度や行政相談委員制度のPRの問題や、事案処理のことでご苦労していらっしゃることもお聞きすることができ、大変参考になりました。有り難うございました。
ところで、現代社会は、行政国家化といいますか、複合的な経済体制の国家ができているわけです。そういう中で、我々、行政と民事という言葉を使っておりますが、法社会の考える、公法でもない、私法でもない、その中間的な行政の任務が存在する時代がきております。
行政というものは、どうしても法律と前例に縛られるものです。行政が、法律を乗り越えて動いたら、やはり目茶苦茶になってしまうからです。そういう意味で、法律に囚われないといいますか、―フランスのビジュアルツーの親書の中に「法典を閉じて心を開け」と書いてあるように、―行政相談委員の社会人としての長い経験と、ボランティア精神によらなければ解決できない問題もあるということです。私どものやらなければならないことは、行政では解決できなかったような問題を解決するということです。そのような問題を解決できたというときに、大変な喜びを感じます。これは、ボランティアの喜びの最大のものであると考えます。
私は、いつも水車のことを考えます。水車は、水の中へどぼっと入ってしまったら回らなくなりますし、逆に、水から出てしまっても回らなくなります。こういう複合的な社会になっているときに、私ども行政相談委員は、総務庁のご指導を受けながら、また、独立な立場でご協力をさせていただきながら、よりよい日本の社会が実現できるように努力したいと考えています。
今から約400年昔、オランダのグロティウス(Hugo Grotius (1583-1645))という学者が、「民族や、宗教や、国家の違いを越えた、人類に普遍的な法(自然法)があるはずだ。我々は、それを求めていかなかったら、世界の平和は実現できないんだ。」ということを、説いており、それを江戸時代の日本の学者が翻訳して読み、非常に感激しているという歴史があります。私どもは、いろいろ風土の違いはありますが、お互い、これからは共通性を求めて、また、より発展させていきたいと思います。
最後に、オースティンさんには、お忙しいところ、今回ご来日いただきましたことに対し、心から感謝申し上げます。
平山局長:ありがとうございました。
時間もだいぶ過ぎましたので、これで意見交換会を終了いたします。