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私は、ナショナル・オンブズマンとして12年間仕事をしてきたわけですが、中心的な仕事は、苦情を市民の方から受けまして、それについて調査をし、政府あるいは行政のどのような行動が原因となってこういう苦情が出たのかということを判断します。そしてこういうふうにしてくださいと勧告するのです。

市民の方からナショナル・オンブズマン事務所に苦情が持ち込まれた場合、まず、私どもの権限の範囲で解決できる問題なのかどうかということを検討するわけです。その問題が、家族に関わる問題であるとか、あるいは消費者の問題である、というようなことであれば、オンブズマンの権限の外なのです。

多くの方たちは、オンブズマンの仕事について、あまり詳しくは知らないということがあります。例えば、電話とか、手紙で申し出のある苦情とか質問などの中には、オンブズマン事務所の主たる仕事である、政府とか行政から国民を守る、ということとは少し関係のないものもあります。しかし、スタッフは、とにかく一度苦情をお受けして、できるだけ何らかのアドバイスができるように援助をするということをしております。

オンブズマン事務所のスタッフは、主たる仕事のほかにも、申出人に対し、アドバイス、あるいは情報を提供するということで、皆様方が、地域の中で、行政相談委員としてやっておられるような内容の仕事もしているわけです。

ただ、やはり制度的な違いとかもありますので、そういうことをもう少しお話をお聞きしたいと思います。

塚本審議官:少し補足させていただきます。この意見交換会の始まる前にオースティンさんから聞かれましたので、日本の苦情事案を件数別、分野別に見ると、道路の問題が一番多いということをご説明しましたが、さらに、身近な問題もあるというようなこともご説明したものですから、その話が今出たわけです。

オランダ人よりも日本人の方が、道路の問題などによく気が付く傾向があるのではないかと、オースティンさんは言っておられます。

オースティン氏:もう少し付け加えさせていただきたいと思います。

ナショナル・オンブズマンは、一定の権限を与えられている公的な機関で、裁判所と同じように、政府とは独立した形で機能をしております。もちろん、国の組織といいますか、構造の中での機能ではありますけれども、独立した立場で仕事をしているわけです。

ナショナル・オンブズマンは、受け付けた苦情について調査をする権限を与えられています。そして、調査の段階では、いろいろな情報を得なければならないのですが、オンブズマンが情報の提供を依頼した場合には、依頼された側は情報を提供しなければならない、という義務が生じるわけです。

 

 

 

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