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そう簡単なことではないと思いますが、最後に素人的に一、二、私も意見を述べさせていただきたいと思います。

一つは、今日の討論の中でも話に出ました、「市民オンブズマン」が名前としてこれだけ知られるようになったということは、やはり無視できないことだろうと思います。それは明らかに官官接待とか、食糧費とか、そういう言葉を普通であれば絶対普通の人の耳には届かないであろう言葉を、殆どの人が知るぐらいに全国的に広め、一種の流行を作り出したということによると思います。そのことが、もちろん弊害もあるでしょうが、制度自体も大きく変える効果を持ったということです。

それから、これも先程、話に出ました「NPO」(民間非営利組織)―NPOなどという言葉自体も数年前までは殆ど知られていなかったわけですが、今は非常にポピュラーな言葉になっているわけです。これも95年の阪神・淡路大震災でのボランティアの活動とか、日本海の重油流出事故におけるボランティアの活動だとかということが、非常に大きなきっかけとなって、急速に法律(「特定非営利活動促進法」平成10.3.25 法第7号)の制定までいったわけです。

そういう意味では、制度の周知・定着のためには、ヒットというか、ホームランというか、そういうものがやはり必要なのではないか、―もちろん、いろいろな経験を積み重ねることが重要である、ということはそのとおりなのですが、―敢えて申せばそういうホームランが、必要なのではないか、ということを私としては感じた次第です。

もう一つは、今日のために少し勉強したなかで私が思ったことを、申し上げさせていただきたいと思います。

1986年(昭和61年)6月、オンブズマン制度研究会が、当時の行政管理庁に「オンブズマン制度研究会報告書」を提出しております。この報告書の中で同研究会は、これより以前に、第二次臨時行政調査会が、1980年代の行政改革の一環として行った提言の中で、「信頼性の確保」のための方策として、行政情報の公開と管理、行政手続制度の整備とともに、国民の権利利益が不当に脅かされた場合にその救済を図るための、行政監視・救済制度の整備が有用である旨提言していることを引用した上で、「公正で民主的な行政を実現し、行政と国民との信頼関係をより一層高めるための方策として」オンブズマン制度が有効であるとし、我が国にも「オンブズマン的機能の導入を図るべき」であるとしております。

オンブズマン制度研究会報告書が提出されてから10年余を経た現在、1993年には行政手続法が制定され、今年になって情報公開法が制定されました。それから行政監視という点については、96年の総選挙では行政監視院というのがかなり議論になりましたが、それを受けて昨年1月から、国会改革の中で衆議院では決算行政監視委員会、参議院では行政監視委員会というものが、国会の委員会として設置されております。そういう意味では、当時提案された制度の中の三つくらいはすでに全国レベルでかなり法制化されてきているというのが、今の状況であろうと思います。

 

 

 

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