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(司会)

どうもありがとうございました。

西尾市での非常に興味深い経験がご報告されたと思います。縦割行政の欠陥を、住民の側にツケまわしをしないで、行政の中の連係により処理する、ということでは非常に重要な問題であろうと思います。

続いて石田さんから発言をいただくわけですが、質問として一つ、先程、石田さん自身は、全面的にはそうは思わない、ということではあったのですが、「民間の力で殆どのことがやれるのではないか」という意見の紹介がありました。それに対して、「自立できない弱者もいるのではないか、老人介護も含め、社会的弱者に民間だけで対応出来るのか、行政の対応が必要ではないのか。」という質問が出されております。

この点も併せて発言していただければと思います。

(石田氏)

先程、「不易流行」の中で申し上げましたが、行政の一番大事なことは人権なのです。人権を守る、平等な人権を守っていくこと、それは弱者に対する権利を絶対に保障するということ、この一点は、譲っていけないことだと私は思います。それが行政の役割です。行政はいらないなんて私は更々思っていません。私は、市長をやっていますから。もう一つは、絶えず行政が考えなければならないのは、藤井さんのご指摘と私は一緒のことだと思いますが、例えば、黒沢明の「生きる」という映画があります。これに、朝から晩までハンコをついているだけの市民課長が出てきます。絶対といっていいほど構造的に行政はぬるま湯なのです。私どもは毎年職員の採用試験をやりますが、みんな目を輝かせて若い人は入ってきます。行政に一生賭けたい、民間の会社をやめて、私企業の競争に嫌気がさして公務員になりたい人がいっぱいきます。その人たちが数年たつと目の輝きを失ってしまいます。これはぬるま湯なのです、危機感がないのです。

そのためには、人為的に行政との何か切磋琢磨する競争の構造を作らないと構造的にぬるま湯なのです。競争してはいけないところを残しつつ、競争する刺激を作っていかないといけない。私は人間の能力というのはぬるま湯が一番怖いと思います。そんなことを常に市長として考えています。

市長の姿勢というのは大事です。私は市長になって虚礼廃止だといって、お中元、お歳暮を全部廃止しました。こういうことをやりませんと、地位が不正につながっていきます。不正を防ぐことは実に大事です。

もう一つは、実際に私どもの自治体でやった例ですが、情報公開をする、食糧費を1円たりといえども、どこに払ったかということを情報公開すると決めましたところ、1年間で3分の1になりました。食糧費は私は必要だと思いますが、どこへ払ったかということを公開すると言っただけで、無駄な支出の抑制効果を生むのです。情報というのはそういう力を持っているのです。市長交際費ももちろん即3分の1になりました。これは私自身の問題ですからね。

そういう仕掛けをつくっていくということですね。ぬるま湯の体質構造に仕掛けを作っていくという知恵が必要になっていきます。

 

 

 

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