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一つは、オランダのオンブズマン制度についてのご質問ですが、「オランダでは、一部の都市―自治体でオンブズマンが設置されているけれども、ナショナル・オンブズマンと自治体オンブズマンとの関係は、どうなっているのか。」という質問です。

もう一つは、これもオランダのオンブズマンの活動に関する質問ですが、「個別の苦情処理にとどまらず、それを端緒に行政の制度や運営の基本について改善を図る機能があるというお話でしたけれども、個別の問題から更に制度や行政運営の基本にかかわる改革につながったという事例について、印象に残っているものがあれば紹介していただけないか。」という質問です。

なお、オースティン先生には、これまでのパネラーのお話についてもお聞き下さっていらっしゃったので、それについてのご感想ということも含めて、そう時間はないのですが数分でお答え願えれば幸いです。

オースティン氏

ご質問有り難うございました。確かに時間がございませんので、なるべく答えを短くしたいと思います。

まず、一つ目のご質問に対してですが、ご質問にありましたとおり、オランダには、ナショナル・オンブズマンの他に、地方レベルのもの、そして警察についてのオンブズマンが置かれております。また、地方レベルのオンブズマンも色々な形になっております。特に大都市では、当該市限りの活動に関する苦情などに対処する、ローカル・オンブズマンというものを市議会に置いております。ですからその場合は、組織的なヒエラルキーというものには関係なく、その市にとってのオンブズマンということになります。ただ、大部分のその他の都市におきましては、ナショナル・オンブズマンの活動に従っております。

二つ目のご質問、これはオンブズマンの活動についてのご質問だったと思いますが、これはコインの裏表のような側面があるかと思うのです。例えば、表の面といいますか、一つ目の機能としては、オンブズマンが個人、一人一人の国民の保護をするという役割を果たしておりまして、それに伴って情報を提供したり、あるいは助言を行ったりということをしております。そして、コインの裏側に当たるもう一方の面としては、そうした活動を行いつつ、今度は政府の質の向上を図るという役割がございます。これは、政府がどのような行動を取ればよいのか、つまり、具体的な苦情が出ないようにするために、政府は、どのような対策を講じたらよいのか、ということをオンブズマンが政府に対し示唆する、そういった役割を果たしていると思います。

私が12年間ナショナル・オンブズマンとして仕事をしておりました間に、そういったような例は数限りなくあったわけですが、そのような活動に関しまして、一つ例を申し上げたいと思います。

それは、市民のみなさんが色々な官庁、お役所に手紙を書いてもその後全くなしのつぶてだということを苦情としておっしゃることがよくありました。実際、その手紙が届いていたのかどうかも分からないし、答えも帰ってこない、どうなっているのだろうということがよくあったわけです。

 

 

 

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