次に、後先生からおっしゃっていただきました福祉の方でございます。他の行政の分野もそうでございますけれども、福祉の分野におきましても、大きな変化が起こっております。
お手元の資料の51ページ(109)にやや難しい言葉で、「社会福祉基礎構造改革」と書いてありますけれども、そういったものを始めと致しまして、来年4月から導入されることになっております介護保険制度、こういった改革や新制度の背景には、福祉を巡りまして新しい理念への移行がございます。
従来、社会福祉といいますと、社会的弱者に対して行政が保護するとか、行政が救済するとかいう考えでございました。けれども、これからの福祉は、ある一部分の人達だけを対象とするのではありません。すべての人を念頭に置いて、まずは一人ひとりが自らの生活を自らの責任で営むという自己責任、自助というものを身につけていくことを奨励していく、そういう生き方を支えていくのが福祉だということです。
一方で、それぞれ私ども一個人を考えますと、ライフサイクルの中では自分の力で頑張ってもどうにもできないこともございます。そういった時はやはり社会が支える、それが当然の社会の義務だということが言えるわけでございます。このことを行政にからめて考えますと、福祉における行政の役割は、まずそれぞれの個人が、自分の力で自分に自信を持って生きて行けるような、そういう支えをしていく、ということが大事になってくるのではないかと思います。また、行政苦情相談というものも、そのような理念を踏まえてやっていかれることが求められているのではないかと、考えております。
その意味で、地方自治体に取りましては、今のことと関連いたしまして、社会福祉サービス供給の具体的領域におきましては、行政だけではなく民間、―この民間は先ほどのお話にありましたNPOというような市民互助型のものから、民間企業のようなかなり効率性を追求するような、そういった両方を含めた民間へのサービス供給の委譲というものが進んでいくと思います。
そういたしますと、先程、オースティン先生のお話の中に、ヨーロッパの国々でもすでにこういった民営化が進んでいる国々はあるけれども、そのことは決して行政の役割を低下させるのではなく、行政は新たな役割、―効率性と正義というものを両立させていく役割を求められている、というようなお話があったと思います。したがって、日本でもそのようなところで新たな自治体の役割を求められていくのではないかと思います。
また、地方分権が進んでまいりますと、それぞれの地方自治体が、従来は、「国の基準」で、というようなことを言っていればある程度解決できたことが、今後は、それぞれの自治体がそれぞれの地域のニーズに添った形で対応していくことが求められていくのではないかと思います。
そのようなことになりますと、これからの福祉行政というものは、それぞれの地域におけるニーズに合った、サービスの質の向上に取り組むということ、そして、それぞれ個人の自己責任というものを奨励すると同時に、一人ひとりの尊厳を保障する、そしてまた、住民の活力、―先程、石田さんのお話にもございましたように、これからは住民の意欲というものを引き起こしていき、それができるところは、住民の方々にやっていただくような仕組みを作っていくことになると思います。