少子高齢化が進むなかでの新しい福祉理念と行政苦情救済活動への期待
後藤 澄江(日本福祉大学社会福祉学部教授)

後藤でございます。
行政監察や行政相談という言葉は存じ上げておりましたが、その中身についてはあまり詳しく理解していませんでした。今回パネラーを引き受けることになって「改めてその活動内容について調べてみました。その結果、いろんな事をしてくださっているということが分かりました。
私が関係しています社会福祉の分野でも、行政監察や行政相談がかかわっていることを理解していないことが多くありました。例えば、ホームヘルパーの方々の業務を拡大する必要があるとか、高齢者の施設をもう少し柔軟性のあるものにすべきである、というようなことが発表されたのですが、そのプロセスに、行政監察や行政相談がかかわっていた、ということを初めて知りました。
そこで、行政監察や行政相談という制度が、いろんな役割を担っているのに、何故私ども一般人に、そういう認識が不足しているのかなということを、私なりに考えてみました。
それは、日本のやり方というか、─先程、オースティン先生のお話の中で、「日本型オンブズマン」ということをいわれましたけれども、─日本における行政苦情の処理システムというものが、対立型ではなく調和型であるために、お仕事をなさった結果をあまりピーアールなさらない、敢えてプロセスを明かさない、というようなことが、逆に言えば私達市民というか、住民が認知が薄いという結果になっているのかな、と思いました。一方で、そのことがともすると、行政相談というものが行政と一体化したものという見方になって、独立性というものを感じることが薄くなっているのかな、ということを思いながら、今日参加させていただきました。
先程の総務庁の審議官や行政相談委員の方のお話の中で大変興味深かったのは、住民の方々と接する日常の業務の積み重ねの中から、その声を汲み上げているのだというお話がございまして、もし本当にこのことが機能しているのならば素晴らしいことだと思いました。そのような国民の声を、行政相談委員の方が、総務庁長官に直接述べることが出来るというような点は、大変貴重であり、そのような機能を活用していただきたいなと思いました。