日本には、行政にもその他何事にも「不易流行」というものがあります。これは、芭蕉が自分の芸術論を言ったのですが、変えるところ(絶えず流行を追いかけるところ)と、変えてはいけないところがあるのです。私は、行政の不易、万古不易変えてはいけない価値観というのは、オースティン先生もご指摘のとおり、「公平さ」だと思います。公平さと、不正義をたしなめるというところです。
公平さも、私が市長をやっておりましてつくづく思うのですが、公平が行き着くと、とても難しいことになります。すべての人に良いことは出来ません。行政はそういう宿命になっておりますからとても難しいです。しかし、世の中全体の調和を取るためには、公平さとプラス規律というものが必要です。そういう行政の宿命を、逆に説明していく存在が必要です。双方向といいますか、今のマルチメディアと一緒です。行政の立場を住民に説明をする。住民の立場から行政を変革していく。この双方向の役割が必要です。そういうものを私は、ビルトインしていくことが必要であると思います。私は、一つの可能性として、NPOの存在─政府組織でもない営利組織でもない第三の存在─このNPOというものが成長してくれば、行政と競争関係になり、そして行政にも緊張関係を持たせる、そういう存在が必要ではないかと思います。
私は、オースティン先生のお話を聞いておりまして、先生が、「オンブズマンというものは、第三者機関でやらなければならない。」と、おっしゃったことはとても大事なことだと思います。私も政治をやっておりまして、政権交代ということも絶対必要であると思います。政権交代をすることによって、情報が共有されるのです。与党・野党ともに、情報が共有されなければだめです。一方だけの情報ではだめです。
もう一度繰り返しますと情報の大切さ、情報公開の大切さ、それからNPO―第三者機関― 、政府組織でも営利組織でもない、そういう機関を作って行くことが、私は非常に大事ではないかということを、まず最初の発言とさせていただきたいと思います。
以上です。
(司会)
どうもありがとうございました。
パネリストの中で唯一の政治家という立場が非常に良く出たお話だったと思います。特に、選挙というものがある意味では、行政苦情への対処が大きな部分を占めている。一緒に怒らないと選挙にならないと言われましたけれども、そういう立場から問題の視野を非常に大きく広げていただいたと思います。市長自身がある意味ではオンブズマンかもしれない。しかし、同時に行政のトップでもあるということ、それから議会という存在もあってそう簡単ではないということでしょう。また、石田さんが強調されたのは、新しい民間団体の存在とその役割についてでした。昨年、NPO法が制定されて新しいタイプの民間団体が法人格を持つという状況になってきておりますが、―また、おそらく後で後藤さんの方からお話があると思いますが、―介護保険の中でも民間団体の役割が益々大きくなると、そういうところまで視野を広げて、行政と市民との関係をもう一度分担関係の見直しということで、考え直してみたらどうかという問題提起だったと思います。