オンリーワンのまちづくり
石田 芳弘(犬山市長)

犬山市長の石田です。
今日6人のパネラーがいますが、私だけスタンスが違うのは、選挙をやっている、ということです。この選挙というのは、すべてではありませんが一面から言いますと、行政苦情の塊みたいなものなのです。行政苦情を聞いて共に怒らないと選挙にならないのです。「やはりそのとおりだ。それはけしからん。」と言わないといけないのです。そういう面があるのです。本当に様々な行政苦情が寄せられます。反面、市長は、行政の長でもあります。行政の長、市長になりますと、これはそういうわけにはいきません。これは守る立場になります。責めと守りを微妙に使い分けなければならない立場でございます。市長職は、自己満足であるかも知れませんが、とても微妙で難しい仕事だと思っております。虚業と実業を使い分けなければならないような事があります。
私は、今日はなるべく他のパネラーと同じような意見を出さないように、─敢えて塚本さんや谷さんと少し違って意見を述べたいと思うのです。私は、今日ここに臨むに当たり、自分の市の行政相談委員の方に、「どういうご相談をしていただいておりますか。」と、聞きました。その結果、これは、我が市だけのことかも知れませんが、行政相談委員の方が受けておられる相談は、私からすれば、「それくらいのことは、自分でやりなさい。」といえば済んでしまうようなことが殆どなのです。
そのようなことから、私は、行政相談委員の担っておられる役割について、もう一度角度を変えて見直しをされてはどうかという感想を持ちました。行政相談委員は、我々自治体が責任をもって総務庁長官に推薦した方が委嘱されておりますから、皆さん本当にお一人お一人、とてもモラルの高い方ばかりです。そういう方に、この世の中が大きく変っている時に、共に行政の在り方と住民の在り方の関係をもう一度考えていただけるような役割も担ってほしいなという気持ちです。
私の親しい友人に、インターネットでNPOの活動をしている人がいるのです。世の中のボランティアの組織を支援する、起業家などを支援するようなことをやっている人がいるのです。この人に言わせますと、世の中の困ったこと、何か必要なことは一つも役所に相談しなくても出来ると言い切っているのです。私は、その人からいろいろな例を聞いて愕然としたのです。行政などはいらないなと思うくらい、自分たちで殆どの事が出来るのです。特に、情報、インターネットの普及というのは、恐ろしいくらい多くの人のネットワークを作りまして、そのネットワークを利用すれば,殆ど行政がいらないと断言してもいいくらいの現象があるのです。だから、私は(行政は、いらないなどということは信じていませんが)、行政は行政でとても大事なのですが、もう一度役割分担を話し合うという時期ではないかと思っております。