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この第4類型についてのオースティン先生の特徴付けによりますと、「先進的経済を持つ歴史のある民主主義国ほどオープンでも多元的でもない政治体制になった…これらの国々では、比較的経済が発展している国に比べ、政府機構の規模が大きく、より官僚的になりやすい傾向にあり…政府高官の外部への説明責任は、…それほど定着していない」ということです。日本でもアカウンタビリティーという言葉がかなり流行語にもなりましたけれども、「説明責任」ということが、大きな課題になるという点も日本との共通点として思い浮かぶところであるわけです。

さらに、こういう国では、「裁判所がうまく機能していなかったり、未処理の事件が山積みであったり…の傾向が顕著」である、ということですが、これも実は皆さんご存知のとおり、日本でも、司法制度改革審議会というのが政府に作られまして、司法制度を機能するようにしようという改革が始まっているところです。

その意味でもこの第4類型との関係で、日本が追い付き型近代化ということで、ある共通の目標に向かって行政を中心に、経済も社会も一丸となって多元性というよりは、いかに早くその目標を実現するかというところに非常に力点を置いてきたことの反面として、多元性とか開放性という点で問題が積み残されているという、そういう特徴が浮かび上がるのではないかと思います。

そういう意味でこの第1類型に基本的に属しながら、第2類型、第4類型からもヒントを得つつ、日本の行政苦情救済制度というものをより前進させて行くという課題を、マクロのレベルから考える上で実に有益な枠組みが提供されたのではないかと思うわけです。

以上、本日のパネルディスカッションにおける問題の「在り処」を見当付ける上での枠組みとして、敢えてオースティン先生の講演のポイントを要約させていただきました。具体的には、これから議論を進めて参りたいと思いますが、日本でも行政苦情救済という面で長い経験が積み重ねられてきております。中でも、総務庁の行政監察局が所管されております行政相談制度、行政相談委員制度については、オンブズマンとしての実質を備えているという「評価」が、国際オンブズマン協会から下されております。そういう定評のある到達点を既に持っている─そういう経験について、これから具体的に当事者の方々からお話を伺いながら、市民にとって望ましい行政苦情救済制度の今後のあるべき姿ということに話を持って行きたいというふうに考えているわけです。

それでは、これからの討論の進行方法についてご説明させていただきます。

先ず、第1ラウンドは、各パネリストからそれぞれお考えになっている点を順にお述べいただきます。各パネリストの発言が一巡したところで、休憩を十分くらい取りたいと思っております。その間に、パネリストの発言に対して質問のある方、また、パネリストの発言に関連してオースティン先生に質問のある方は、所定の質問用紙に質問内容とどなたへの質問であるかということをお書きになって係の方にお渡しいただきたいと思います。

 

 

 

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