特に、第1の類型の国々においては、「巨大で官僚的な組織とかかわって行くうちに感じた無力感から人々は、オンブズマンの保護を求めることが多い。したがって、こうした国々では、…政府の様々な行動についての苦情を処理することが、オンブズマンの仕事の大部分を占めている。」と、おっしゃいましたが、正に、日本はこういう国であることは明らかであると思います。
しかし、私が聞いておりまして、第1の類型だけではなく、第2類型とか第4類型の特徴ということも、日本の場合を考える上で示唆に富む部分があるのではないかという気がちょっとしました。
どういうことかと申しますと、「経済発展」というところを取り敢えず第1類型と同じにして、第2類型というのは民主主義の歴史が浅い国ということになっております。そういう国では、政権交代の最初の数年くらいの間に、オンブズマンの制度が確立されたというふうに言われたわけですけれども、日本でも民主主義国としての伝統は長いのですが、政権交代ということがずっと行われてこなかったわけです。ようやく1993年になって、戦後初めて、(戦争直後を除きまして初めて)自民党が、10か月間でしたけれども野党になり、非自民の政権が樹立されました。しかし、その後また自民党が政権に復帰している。この間、共産党を除くすべての政党が「与党」の経験を持ったということがありました。これが、日本の政治状況を非常に大きく変えたと、私は考えておりますけれども、そう考えますと、政権交代という点に力点を置いた民主主義の歴史ということからいえば、日本は、新興民主主義国という側面を持っているのではないか、とも思えるのです。
このように考えますと、第2類型の特徴の中で、「閉鎖的で抑圧的な体制を脱して、情報公開をし、批判に耳を傾ける姿勢のある政府へと変化して行くプロセスを導く」のが、この類型の国でのオンブズマンの役割であるという意味で、開放性とか多元性とかいう方向で政府を今改革する必要があるというのが、先般の情報公開法の制定や行政手続法の制定という形で実現していることでもあるわけです。そういう意味では、日本はこの第2類型とも部分的に課題を共通にするところがあるのではないかと思うわけです。
もう一つは、第4類型ですけれども、これは、なかなかユニークな類型分けで、確立した民主主義国ではあるけれども経済が発展途上にあるという国です。この類型の国と日本とが共通している点があるというのは、やや意外に思われるかも知れません。しかし、日本の場合、確かに経済発展の水準は非常に高いわけですが、ここまで来る間の明治維新以来の富国強兵、それから第二次世界大戦の敗戦以降の高度経済成長ということを考えますと、これは非常に発展途上国的な、つまり、非常に高い目標ではありますけれども、今いわゆる発展途上国と言われる国が目指している目標より遥かに高い、世界での最先進国を目標にした、追いつき型近代化ではありますけれども、そういうものに向かって非常に急速に発展しようということが課題であった時代が続いてきたわけです。そういう意味で水準は高いのですが、ある一つの方向に向かって「一丸となって努力をするという特徴が、この第4類型との関係では共通点として指摘できるのではないかと思うわけです。