このタイプの場合も、オンブズマンの仕事は状況によって変わってきます。つまり、汚職に対抗する努力にオンブズマンの時間が多く費やされるのです。タンザニアやザンビアのような国々には、オンブズマン制度が昔からあります。こうした国々では、オンブズマンが独立的な調査委員会という形で、「不正議につながる悪い行政」のケースを調査をします。
オンブズマンの仕事の重要な要素は、年金などの形で支払いをすることと関連をしています。時にはオンブズマンが、小額保障請求のための裁判所のような役割を果たすこともあります。特に、裁判所がうまく機能していなかったり、未処理の事件が山積みであったり、裁判にかかる経費が一般庶民に賄えないぐらい高い国々では、こうした傾向が顕著に見られます。
ちなみに、こうした国々では、警察、諜報機関、そして場合によっては軍隊の活動の仕方や、刑務所の状況、また、政府が特定の集団を差別しているかどうかなどによって、オンブズマンが人権の分野で特別の任務を帯びることもあるでしょう。これは、例えば、「人権委員会」といったような形で、そのような問題を扱う仕組みが他にあるかどうかによる部分が多いと思います。
以上、述べてきた四つのタイプは、かなり大まかで型にはまった分類です。現実には、それぞれのタイプに当てはまる個々の国々は、経済発展においても、法の支配による民主主義国としての成長においても、大きく異なっています。しかし、どの場合にも言えることは、オンブズマンの主な特徴は自らの管轄下にある機関から独立した立場にあるということです。これは、政府が良いガバナンスの基準を満たさなければ、オンブズマンが守ってくれるのだという信頼感を国民に抱かせるためには非常に重要な点です。
また、オンブズマン制度がどのような名称で呼ばれ、先ほどのタイプ別分類のどこに位置するかに関係なく、オンブズマンは苦情を基に仕事をするかたちのものであることが重要です。法律の範囲内で、国民は、政府に関するどんな苦情でもオンブズマンに申し出る権利を与えられているべきです。そして、オンブズマンは国民の苦情を検討する義務を与えられねばなりません。
日本型オンブズマン
さてみなさん、先程の分類で、私は、日本や日本の行政相談制度には触れませんでしたが、業務の内容を見ますと、この制度が、他の国々のオンブズマンと同じ機能を日本で果たしていることは明らかだと思います。この制度は、国民の政府に対する苦情の処理を行います。その一方で、新たな苦情が出ないよう対策を取ることも重視しています。この制度が整備されたのは、国民を政府から保護するためです。機能的な面から見ますと、この制度は、オンブズマンのように苦情を基に動くものです。
一方、制度的な面から見ますと、「日本型」という言葉を付けることで、行政相談制度とオンブズマンとの違いが表わされています。ここでのポイントは、オンブズマン制度の不可欠な特徴である独立性です。行政相談制度は、個々の構成部分がネットワークを形成している仕組みです。その中でも、行政監察局とその出先機関の職員の場合は、比較的自立性はあるものの、総理府の外局である総務庁、すなわち、政府部内で動いています。しかし、一方で行政苦情救済推進会議や約5千人の行政相談委員のように、より外部の独立した立場の人たちもいます。このネットワークの構成部分として役割を果たす組織や人々の独立性が、よりはっきりしたものになればなるほど、このシステムは制度的な意味でもオンブズマンに近付きます。