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オンブズマンの独立性は、制度的に保障し、政府自身はもちろんのこと、関係者すべてがそれを尊重しなければなりません。これが、国民がオンブズマンに信頼を置けるようになるための必須条件です。この独立性に基づいて、オンブズマンは自らの決定が実行に移されるために不可欠の権威というものを獲得できるようなやり方で、任務を遂行していかなければなりません。

オンブズマンが良い仕事をするためのもう一つの必須条件は、国民がオンブズマンに容易にアクセスできるということです。国民との良好な関係を保つには、オンブズマンは国民にとって有効な存在でなければなりません。というのは、国民がオンブズマン制度に信頼を置くことが不可欠だからです。この信頼を生み出すには、オンブズマンは清廉潔白を旨として行動するだけでなく、仕事の成果を挙げなければなりません。こうした成果が挙がらなければ、国民はオンブズマンに頼る意味がないと感じるようになるでしょう。

 

タイプ別分類

以上、オンブズマン制度一般の特徴を、その呼称や、制度が機能するための特定の背景にかかわらず、いくつか挙げてきました。しかし、オンブズマン制度が国によって異なっているという事実は、依然として残っております。オンブズマンの具体的な任務と地位の差は、そのオンブズマンがどういう背景のもとで業務を遂行しているかによって大きく左右されます。

これに関連して二つの分類をしておきたいと思います。

まず第一に、民主主義の伝統と経験による区別です。すなわち、私が便宜上「確立された民主主義国」という名称で呼んでいる、長期にわたって法の支配の下にある立憲国家と最近出現してきた新興民主主義国家との間の分類です。

第二には、先進国と発展途上国という、経済発展の度合いを基にした分類です。

これらの条件を組み合わせますと、四つのタイプに分かれます。すなわち、「経済発展した確立された民主主義国家」、「経済発展した新興民主主義国家」、「経済が発展途上にある新興民主主義国家」、「経済が発展途上にある伝統的民主主義国家」の四つです。

さて、これから今挙げました各タイプについて、それぞれ少しずつお話をしてまいりたいと思います。もちろん、私の行った分類は大雑把なものです。というのは、タイプ分類に使用した政治と経済という二つの要素は、現実には非常に多種多様な現れ方をしているからです。しかし、取り敢えずは、先進経済の国々の中の二つのタイプの民主主義をまず見た上で、発展途上国の状況についても考えてまいりたいと思います。

 

1 経済発展した確立された民主主義国

まず第一に、現代のオンブズマン発祥の地であるスカンジナビア諸国、そして私の祖国オランダといった、民主主義の法治国家として長い実績のある国々の状況があります。こうした国々は、程度の差こそあれ、すべて福祉国家です。こうした国々のオンブズマン機能は、従来の制度ではもはや国民を政府から十分保護できないという認識から、それを補完するため整備されたものです。こうした事情が見られるのは、北ヨーロッパそして西ヨーロッパ諸国やニュージーランド、カナダ、オーストラリアといったイギリス連邦の国々です。

 

 

 

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