オンブズマン制度の主要な特徴
日本で行政相談制度が創設されたのは、1955年のことでした。同じ年に、つまりほぼ45年前になりますが、デンマークが、1809年のスエーデン、1919年のフィンランドに続き、オンブズマン制度を整備した世界3番目の国になりました。そのデンマークが先駆けとなり、この制度が世界中に普及しました。1973年には、ヨーロッパの6か国を含む、世界10か国がナショナル・オンブズマンを整備しており、さらに4か国が自治体オンブズマンを開設しておりました。
それから10年後の1983年半ばになりますと、私の国オランダも含め、21か国がナショナル・オンブズマンを任命しており、自治体オンブズマンを運営する国も更に6か国増えております。
それ以来、この制度は飛躍的に発展いたしました。今世紀の終わりを迎えようとしています現在では、80か国以上が国あるいは自治体レベルで、オンブズマンを設置しております。1995年9月1日には、欧州連合が世界初の超国家的オンブズマンを整備しました。
こうした数字を見ていきますと、非常に目覚しい発展があったことが分かります。わずか数十年の間に、その呼称は必ずしもオンブズマンではない場合もありましたが、とにかく世界中にオンブズマン制度が整備されてまいりました。
過去10年から15年の間に、中央ヨーロッパ、東ヨーロッパの諸国、またラテンアメリカの諸国でもオンブズマンが任命されました。こうした国々は、全体主義支配の終焉を迎え、また新しい民主的な秩序の建設という課題に直面しております。オンブズマンの存在と活動は、こうした若く、時にはまだひ弱な民主主義国の発展に寄与し、国民の政府への信頼を築くのに役立つことになると思います。
もちろん、公共機関が国民に対して適切に権限を行使するように図る、第一義的な責任を持つのは政府です。現在の政府はかつてないほど、この点をよく理解しており、国民の苦情に耳を傾けることで、政府の行動の質の向上につながる、ということもよく認識しています。
しかし、こうした内部のコントロール・メカニズムも重要ではありますが、外部からの監視の補完的な役割が不可欠であることも、経験から明らかになっております。議会や司法機関によるコントロールと並んで、オンブズマンは独立的立場からそうした監視に一役買っております。オンブズマンは、政府に対して、国民ひとりひとりの処遇の仕方についての説明を求めているわけです。
オンブズマンは、国民のために設立される制度であり、その存在理由は一般の人々を政府から守ることにあります。その他、政府の質の向上を図るといったような役割もありますが、あくまでも一番重要な役割は、「国民の擁護者」たることであります。オンブズマンを表す、この「国民の擁護者」という見事な呼称は、スペインで考え出されました。政府は当然ながら特別な権限や多くの独占権を持っております。このため、人々は社会状況や事情に応じ、程度の差はあるものの、様々な形で政府に依存せざるを得ません。したがって、国民は政府に正しく業務を遂行してもらおうと願います。しかし、残念ながら必ずしもこうした国民の期待通りには動かない、ということはよく知られています。