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○ 谷委員:行政相談をやっておりますと、頭から、お役所なんかに何を言ったって駄目なんだ、という考え方を持っている人と、逆に、こんなことは個人でやるべき問題だろうというようなことも行政がやるべきだという考え方を持っている人と、両極があることが分かります。これは、日本の民主主義の成熟度の問題かなというように思いますが、そのあたりはオランダではいかがでございましょうか。

● オースティン氏:2種類の方たちがいらっしやるというお話でしたが、これはオランダも同じことがいえます。

お役所に苦情を持っていっても、どうせ駄目だろうというふうに思われる方たちは、政府に対してあまり信頼を持っておられない方だと思いますが、そういうふうに思ってしまう人がいるということは、民主主義にとっても、それから政府にとっても危険なことであり、政府に対する信頼を国民の方たちに持ってもらうということが、非常に重要なことだと思います。その意味では、皆様の行政相談のお仕事というのは、そういった人々の間にある疑いの気持を払しょくして、政府に対する信頼を回復させるという非常に重要なお仕事だと思います。

私の経験でも、今までどうせ駄目だろうと思っていた方が、オンブズマンのところにきて、オンブズマンが熱心に話を聞いて解決に持っていく、ということをしたところ、大変喜ばれる方がたくさんいらっしゃいました。

それから、もう一つ、自分で解決できるような問題までオンブズマンに苦情として持ってくるという方がいらっしゃいます。

そういう方は、政府というのは、個人の生活まですべて責任を持つべきである、というようなことを思っており、何か問題があれば政府を攻めればいいというように思っている方もいらっしゃるわけですが、実は、その人の不満の中には、十分に説明がされていないことに原因があるのではないか、と思われる場合があります。そのような場合には、私どもオンブズマンが、不満を持っておられる方に対して、政府はこのように適切に対応したということを、きちんと説明するわけです。

○ 森下委員:私たち行政相談委員は、苦情相談については、原則として秘密を守っているわけです。オンブズマンが調査段階において得た情報は、秘密扱いでございましょうか。

● オースティン氏:私ども、もちろん秘密を守るということは、大事なことであると思っております。特に、個人のプライバシーということにつきましては、これを厳守するということになっております。ただ、調査段階におきましては、いろいろな情報がどうしても必要になってくる場合があります。

私どもは、調査した結果を報告書にまとめて、これを公表しておりますが、最終的には、二つのタイプの報告書を作るわけです。一つは、すべて、名前も入っているけれども、これは公表しない報告書であり、もう一つは、一般の方たちの目にも触れるというものであって、必ずその場合はプライバシーの侵害につながるような名前の公表はしないということで、すべて名前は伏せて作成されます。

 

 

 

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