このように、オンブズマンは、非常に強力な権限を持っておりますが、「アドバイス・ビューロー」は、いろいろな市民の方たちの苦情や問題に対応して、アドバイスをしたり、情報を与えたりということはしますが、オンブズマンのような強力な権限は与えられておりません。そのあたりが、オンブズマンと「アドバイス・ビューロー」という組織との大きな違いだと思います。
苦情等の取り扱い件数については、「アドバイス・ビューロー」の方は、細かい数字は分かりませんが、年間少なくとも1万件以上の問題が寄せられていると、聞いております。これに対し、ナショナル・オンブズマンが取り扱った件数は、昨年の場合、文書の形で出されている苦情が8,500件、それから、情報を提供して欲しいというようなものが、14,000件ございました。
もう一つ、オンブズマンの非常に大きな特徴として、付け加えさせていただきたいことは、例えば、一人の個人の方から寄せられた苦情から、いろいろな問題が引き出され、それが解決されることによって、たくさんの方たちが恩恵を被るというようなことがありますし、また、予防的な措置をとることができるということであります。そういった予防的措置を取ることによって、政府の質を高めていくということができるのです。
一人の個人の方が、何かを提言することによって、オンブズマンが動き始め、そのオンブズマンの仕事によって、その問題から引き起こされる様々な問題が解決され、非常に多くの方たちが、大きな利益を得るということがあります。これは、オンブズマンだからこそできることであります。これが市民のための「アドバイス・ビューロー」であれば、その問題一個に対してアドバイスをする─解決をする―ということで終わってしまうのです。
○ 堀田委員:市民のための「アドバイス・ビューロー」のスタッフの方たちの資格、それから、対人口比でみてどの程度の組織ができているのかお聞かせください。
● オースティン氏:「アドバイス・ビューロー」のスタッフの資格ということですが、この仕事は非常に複雑で、人々に対する社交性ということも大切ですが、それ以上にいろいろな分野についての、多くの問題に関する知識が十分なければいけないといった条件が必要になってくるのです。そして、そのスタッフの方たちは、専門知識を持った上でのプロ意識といいますか、プロフェッショナリズムというものを持たなければいけないのです。当然ながら、大学あるいは大学院を出ている方、それも法律であるとか、社会科学であるとか、そういった専門分野にも詳しい方でなければいけないということがあります。