このような相談は、枚挙にいとまがありません。私は、このような相談については、まず市町村役場に婚姻届出を提出した後、入国管理局に出頭し、法務大臣に在留特別許可を申請することにより強制送還を回避する方法をとることを勧めるようにしています。この方法では、入国警備官の違反調査を受けると同時に、仮放免の手続きを伴いますが、しかし、これを処理するには幾つかの課題があります。
婚姻届出には、民法に規定する年齢(男は18歳以上、女は16歳以上)、重婚の禁止等、結婚の要件が具備されていることを立証するためにパスポート等の他「婚姻要件具備証明書とその訳文」を添付する必要があります。このため、本国から出生証明書や独身証明書等を取り寄せることになりますが、これには相当の時間を要します。
ある意味で時間との戦いの中で進めている手続きで、本国とのやりとりに時間を要することが第一の壁です。第二の壁は、市町村職員の不慣れです。稀な事案であるため、処理に時間を要することは理解できますが、相談者と伴に役場へ赴き、説明を重ねても、法務局への照会に時間を費やしたり、さらには、それでなくても時間を要する本国とのやりとりを要求されることも少なくありません。例えば、同じタイ女性との婚姻届出について、ある市では婚姻要件具備証明書とその日本語訳のみで受理するのに、他の町では、さらに大使館又は領事館が発行した英文訳も添付するようにとの指導を受けたケースもありました。最大の壁は、法務省の在留特別許可の審査基準が明確でなく、かつその審査に時間を要することです。仮放免の身ですから、ひと月に一度は入国管理局に出頭することになりますが、その都度、審査の進捗状況を問い合わせても「審査中」との返答を聞くのみで、むなしく時間が徒過することになります。
もちろん全ての手続きが円満に処理され、強制送還を回避し、平穏な家族生活を続けるケースもあります。しかし、中には手続きに時間を費やし、手続き中にパスポートの期限が切れ、処理を待ちきれずに本国へ帰国し、そのまま家族崩壊になったケースもありました。
(2) 日系二世が就労目的に入国するケースが増えています。この為、その子である日系三世の入国も増えています。
定例相談日に、若い身重の女性が来所しました。聞けば、14歳で父(日系二世の配偶者)とともに入国したとのこと。日本の中学校に一年間の就学の後、就職。職場の上司である日本人との間に子供が出来たが、男性が自分の子であることを認めないとのことでした。そうこうするうちに出産した訳ですが、依然として男性は認知しようとはせず、彼女自身も乳飲み子を抱えて生活に苦慮することになりました。このため、彼女のような外国人であっても児童扶養手当を受給できるか市に確認したところ、該当するとのことでした。しかし、婚姻していないことを証明する必要があり、例えば独身証明書を提出する必要があるとのことで、早速彼女に本国からこれを取り寄せ、申請するよう教示しました。
また、このままでは生まれた子供の国籍すら明確でなく(男性が認知しない限り、日本国籍は取得できませんし、本国であるブラジルでも父親を特定しないと国籍が取得できません)、本人の意思により認知訴訟を提起することになりましたが、当初、依頼した弁護士との間に言葉の違い、生活慣習の違いから十分な意思の疎通ができなくて、弁護を断ってしまいました。このため、急速、知人の弁護士に弁護を依頼し、訴訟は現在も継続中です。