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5. 中国人の夫の入国の簡素化について

 

神奈川県横浜市港北区

行政相談委員 田中 ルリ

 

相談者はパリ留学中に知り合った中国人と10年来の恋愛を実らせて、、1998年(平成10年)3月に香港で結婚式を挙げた女性である。

このように永い春になったのは双方の親の反対があったからである。親達は人種や国籍が異なることに不安があるだけでなく、二人が適職を香港、日本と離れて持っており同居が困難なことも心配したのである。

婚約中には妻が度々、夫のいる香港を訪れ滞在したが、中国人の夫が妻のいる日本に来るのは簡単ではなかった。滞在ビザを貰うため、入国理由を「婚約者訪問」とすると、何時、何処でどうやって二人が知り合ったかを説明する証明書類が必要とされ、卒業証明書はもとより、当時、妻の父親がパリ勤務であったという証明まで求められた。更に、滞在費用の保証、各自の収入証明等、日本入国を申請してから煩雑なこれらの手続を経て滞在許可が下りるまで半年は優にかかる上、その間は許可が下りるかどうか気をもみ続ける日々であった。しかも一度、許可されたからといって次回は簡単に許可されるわけではなく、煩雑な手続は入国の度、繰り返された。

ふたりの結婚式は、香港で親族を交え挙げられ、夫は中国の戸籍に、妻は日本の戸籍に婚姻の事実が記載され、法律婚として両国が承認し、これからは夫として妻を訪問することになり、入国は容易になるかと思われたが、それぞれの戸籍提出が増えただけ、手続は余計煩雑になった。相談者は自分が病気になっても夫が駆けつけられないのは人権問題だと強い口調で述べ、入国の簡素化を切望していた。

このような相談を受けて、入国管理法を調べてみた。1991年6月施行の同法の改正で、親族呼び寄せの特例に該当しないか入国管理局に問い合わせたところ、丁寧に答えて頂いたが、夫が中国人で香港居住者というこのケースは審査にもっとも手間取る事例と説明された。丁度、香港が英国から返還された時期であり、人々の移動の激増も審査を厳しくしていた。しかもこのケースは親族呼び寄せではなく、一時滞在であり、不正入国や偽装結婚を疑われても仕方がない。つまり簡素化は難しいと言われた。

止むなく私は相談者にその説明をそのまま伝えた。不正入国といわれ偽装結婚と疑われることを相談者は納得できない様子であった。なお、外国人問題に詳しい知り合いの弁護士さんに訊ねてみたが、法を曲げることはできないので何もしてあげられないという返事だった。これらの説明をした際の彼女のがっかりした様子は暗い声からも察せられた。

その後、この行政相談事例報告をみた行政監察事務所から入国管理局への照会等もあり、手続き通り申請するよう勧められた。その頃、彼女の仕事が多忙だったこともあって夫の入国を半ば諦めていたが、頑張って再度、申請手続に走り回った。

間もなく彼女から電話があり、入国手続が1か月で完了した上、1年間有効の日本滞在許可書も下りたという元気な声での報告があった。

 

 

 

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