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50ノットで航行する高速船の衝突或いは座礁事故は、20ノットで航行する船舶の事故に較べてより深刻な結果を招くことはないと、確かに言い切れるでしょうか。それは必ずしもそうだとは言えないという注意喚起がこれまでありました。私の考えていることは、予測することが出来そして回避することが出来た筈の重大な災害に、何時の日にか遭うということが出来るだけないように、これらの活動を今、丹念に調べるべきであるということであります。

私どもは皆、何か悲劇的な経験から教訓を学ぶということが非常に多かったために、我々は事件を抑制するのではなく、事件の起きるがままにしているという印象を世界に与えています。我々はこの姿勢を続けることを許す訳にはいきません。技術の進歩のお蔭で、我々はこれから起こることに対して、これまでよりも良い立場に居ることになります。コンピュータ・シミュレーション技術の利用、災害データの解析、そして危険の解析と安全性評価の手法を利用して、我々が決定したことの結果をより明確に予測し、より正確なものにする能力を持ったのであります。

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皆様はVTSの問題について具体的に論じられるのでありますが、それは、将来の技術的進歩及びそれらが海上の安全にどのように寄与するのかに焦点を当てた、今回の全プログラムが織りなす布の一本の糸であります。私は貴方がたの討議が、その点で規範として役立つように、そしてその過程が他の重要な論題に移されて、ここで採られた取り組み方が便益をもたらすように希望したいと思います。

ここでのこれから数日間の予定は非常に興味深いものであり、専門家としての知識と経験を発表する講演者をお迎えしたことは、私どもとして幸いであると存ずる次第であります。最後にこのシンポジウムの主催者に対し、これまでになされた素晴らしいお手配へのお祝いを申し上げ、また私をご招待下さったことに重ねてお礼をし申し上げると共に会の成功を心からお祈りするものであります。

 

 

 

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