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このような標準を公布し、海上作業の安全を全般的に向上させる努力は、IMOの援助のもとに、今後国際的なレベルで進められるのが最善であります。私はこのVTS2000の多くの議題の中で、特にこのような国際標準の必要性及びこれに関連した問題が討議されることに留意したいと思います。

船舶通航業務についての一組の国際標準が開発されたのは1998年でありました。これには、締約国が船舶交通の安全及び効率の改善、及び海洋環境の保護のためにVTSを計画し実施する際の責任について概説してありました。私は、VTSについてのこれらの指針がIMOで採択されるとき、VTS運用官の採用、資格付与及び訓練の基準と併せて行われたことを知り、嬉しく思いました。

IMOによる今一つの大きな努力は、船舶に自動識別システム(AIS)の設備を求める計画案であります。当初は、国際貿易に従事する300総トンを越える新造船に、2002年までにAISの搭載が求められます。

シンガポールは、主要中枢港として、IMO及び国際海運界の航行安全についての関心に強い共感を覚えております。私どもは、船舶通航管理の安全及び効率の向上及び環境保護に取り組んでおります。この重要な問題へのシンガポール港湾局(MPA)の取り組みについて簡単に触れさせて頂きますと、先ずAISの支援として、昨年このシステムの機能を評価するための水先人計画を完了しております。水先人テストの結果は、AIS船上トランスポンダはVTS運用官の音声通信時間を半分に減らすことが可能であることを示しています。このことは、VTS運用官が、その重要な作業である衝突や座礁を回避させるための交通監視により注意を払うことが出来る、従って航行の安全を向上させるであろうということを意味しているかと思われます。私は、MPAがIMOの他のメンバーと共にこの経験を生かし、AISトランスポンダをシンガポール港に取り入れるための検討を進めていると考えております。

大型、高速の船舶の港内での呼び出しの増加によって、航行の安全確保の必要性及び海洋環境の保護はますます緊急を要することとなっています。このことは、港湾当局が船舶交通の監視と相互関与を如何に効率的に行えるかという能力に懸かっています。

効率的な船舶通航システムがなければ、シンガポール港は増加する船舶からの呼び出しに対応することは極めて困難だったでしょう。シンガポール港が1990年に最初のVTSを送り出した時、60,300隻以上の入港船を取り扱っていました。この数字は、昨年は1230パーセント以上、1,450,000呼数以上にまで増大しています。

この急激な船舶交通の増大に対して、MPAはシンガポールの船舶交通を迅速かつ安全に処理するための努力を惜しみませんでした。これまでに採られた対策には、IMO承認の通航分離方式及び強制船位通報システムとしてのSTRAITREPが、インドネシア、マレーシア、シンガポールの三国共同で施行されたことがあります。MPSのVTSはシンガポールの沿岸とその沖合の島に9局のレーダー局を配置して連携させています。このシステムは同時に5,000隻までの船舶を追尾することが出来ます。

 

 

 

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