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自己を振り返り、再認識できたこと

 

医療法人社団松濤会安岡病院

横山 智子

 

受講の動機

 

私が看護婦として勤務をしていた時代は告知はまだ一般的にはされておらず、患者を励ましながらできるだけ病気、症状については多くにふれないようにしていたと思います。その中で自分の病気を全て知っている人もあり、自分が看護婦としてどのように関わればいいのか、何もできなかった自分に対して情けなくジレンマをもっていました。病気や症状について聞かれてもどのように答えていいのかわからず、家族も看護婦がどのように話すのか不安をもっていたと思います。患者の気持ちを十分に医療者である私達がしっかりと受け止めることができず、心理的に孤独にさせてしまっていたと考えます。このように患者を心理的にも孤独にすることなく、どのように患者・家族を看護の対象として考えていけばいいのか、ホスピスでの経験の中で自分の課題としてもっていました。

勤務していたホスピスは院内独立型であり、多くの患者や家族との出会いがありました。終末期において限られた時間を過ごすことの意味を考えるうえで、私達が日々行っているケアの責任は大きいと思います。しかし、自分の予定されている業務を果たすことに追われる毎日が現状でした。患者・家族を通した直接的ケアや、お互いの関係性から人間のふれあいを通して生まれる間接的ケアや孤独にさせないことも含めて、その人にあった関わりが必要です。症状コントロール・日常生活の援助・家族のケアなど看護婦は24時間患者のそばにいることから、チームで統一したケアを提供できるようにしていかなければなりません。

患者・家族へのケアを振り返り、ホスピスケアにおける看護婦の果たす役割から、今まで学んだことを通して自分自身を見つめ直す機会としたいと思い受講しました。

 

実習での学び

 

実習病院はピースハウスホスピスで完全独立型の病院です。第一印象として人の温かさを感じさせる病院だと感じました。季節感を大切にし、身近にある自然をそのまま病棟の至るところにさりげなく飾ってあり、見る者の心を和ませてくれました。天気がいい日にはホールから富士山が一望でき、見事なものでした。思わず見とれるぐらいであり、この一時は何もかも忘れることができるぐらい心を奪われるものでした。病室のどの部屋からも外のテラスに出ることができ、明るい日差しと手入れの行き届いた庭、毎日の各病室の花の水替えなど、ボランティアの果たす役割は大きいと考えられました。

次に一般病院と大きく違う点は、ホスピスではチーム医療が重要となります。ピースハウスホスピスは独立型のホスピスという特徴から、チームメンバーが一か所にそろっていました。これはチーム医療を行ううえで重要であり、患者・家族の多様なニーズに応え、チームアプローチを行ううえで有効だと思いました。チームアプローチとは、医療者がそれぞれのもつ役割と専門性から多角的に捉え、共通の問題として共有したり、評価することです。カンファレンスの活用はタイムリーな問題提起を可能にし、早期に問題解決へと導くことができます。

 

 

 

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