この過程を通して、おそまきながら自分のケアに対する正当性を見出すことができ、自分の心が癒されました。逆に、当時の私の対応が未熟なため、患者さんや家族に満足のいくケアが提供できなかったことが明確になり、反省させられました。
二つめの課題である、ホスピスケア認定看護師としての具体策に関しては、結局のところ、自分が現在の職場をどれだけ知って、どうアセスメントしているかにかかっていることが理解できました。私はこの職場のアセスメントを通して、自分が物事をネガティブにとらえる傾向にあると気づくことができました。何ができていて何ができないのかのアセスメントがゆがんでしまうと、おのずと次の具体策も現状とずれたものになってしまいます。レポートも提出を重ねていくうちに、自分の傾向を知ったり、他者に自分の考えをわかりやすく伝える方法なども少しずつ上達できたと考えています。
実習は、国立がんセンター東病院緩和ケア病棟に5週間お世話になりました。私は、がんセンターに勤務しているので、自分の職場に最も近い形でホスピス・緩和ケアを提供しているがんセンターにおける緩和ケア病棟をぜひみて見たいという希望がありました。10か所ある実習施設で、がんセンターの緩和ケア病棟は、国立がんセンター東病院1か所だけでしたので、希望が通り大変嬉しく思っています。
国立がんセンター東病院は、病院全体で内外の研修を支援する体制が整っており、研修生の宿泊施設や、看護婦・病棟の受け入れ体制やシステムなども充実していました。なにより、研修や研究・教育に病院全体で熱心に取り組んでおり、研修生の受け入れも大変スムーズでした。他施設で働いたり、実習する機会のなかった私は、スタッフの方々にうまく溶け込めるのかと不安もありましたが、皆さん丁寧に対応してくださり、安心して実習に専念することができました。本当に感謝しております。
実習前に、国立がんセンター東病院緩和ケア病棟の丸口ミサエ婦長から、ホスピス・緩和ケアに関して、事例を通して講義を受けました。ここでの講義で、ホスピス・緩和ケアを実践する時に大事にしていることとして、徹底した症状コントロール・良好なコミュニケーション・自律に配慮した日常生活の援助をあげておられたのが印象的でした。実際に現場で実習してみて感じたことは、本当に講義で強調されていた3点が丁寧に徹底して行われているということでした。
症状コントロールに関しては、医師・看護婦・精神腫瘍学医師・臨床心理士・薬剤師・理学療法士・栄養士・ボランティアなど他職種からなるチームアプローチが積極的に行われていました。朝の医師・看護婦によるチームミーティング、午後のチームカンファレンス、週1回行われる他職種による合同カンファレンスなど、ホスピス・緩和ケアにおいて重要なチームでの関わりが実践されていたのに感動しました。どの職種も自分の分野に責任を持ち、他の職種に対して敬意を持って対応しているのに感心させられました。これらの総合的な力が、患者さんの苦痛症状に対してきめ細かいケアにつながっていることが理解できました。
コミュニケーションに関しては、私自身のコミュニケーション・スキルの課題を明らかにする意味においても大変大きな学びを得ることができました。今までの私は、患者さんの話を傾聴しようと頭では考えていましたが、それをどのように実行し、それが患者さんにどのように伝わっているのかということをあいまいにしてきてしまいました。このことを、今回の研修中に講義や演習を通して気づくことができました。その上で臨んだ実習でしたが、スタッフの方々のコミュニケーションと自分のコミュニケーションを比較・分析して、傾聴して相手のありのままを受け止めるコミュニケーションが、自分の中で技術として行動化できていないことに改めて気づくことができました。それは、コミュニケーションにおける間のとり方であったり、言葉以外の非言語的コミュニケーションであったり、アサーティブな考え方と行動であるなど、多岐にわたると考えています。