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毎日開かれるお茶会には多くの患者さんが参加し、「がん」という言葉を使って自分の状態を報告し合っていたり、お茶会に参加できない患者さんの体調を気遣っていたりしたのが印象的でした。がんという病態を共有する患者さん同士の励ましは、医療者には与えることのできない強さがあると思われ、反対にお互いが死に向かっていくという辛さも持ち合わせているのだろうと思われました。真実を知り自分で決定するという過程の利点と辛さを考えていくことの重要性を痛感しました。

患者さんとの出会いは、施設が違っていても同じです。患者さんたちには今持つ自分たちの最大限の力を発揮し、生きていることを感じました。看護婦はその力を引き出すための環境を提供することが必要であり、そのために対象を知り、あるがままを受け入れること、側にいたり、話を聴いたり、共に考え、関わりを持ち、決定していく過程の中で信頼関係を築き、支援できることが必要だと考えてきました。実践し得られた患者さんからの評価は、自己のケアを評価することの指標となり、この評価の積み重ねがケアの自信につながっていくように思いました。

症状コントロール、看護介入においては、違いがあることを感じました。正しいとか正しくない、とかいうのではなく、その病棟の理念や歴史から作りあげられた経過の結果であるのだろうと考えました。しかし、実践のなかでは自己の中に新しい価値を導入させることの難しさを再認識し、葛藤する自分に苦しみました。同時に互いの持つ知識や情報を交換し、話し合うことで、自分の知らない方法を得ることができたり、自分の言葉として表現したり、伝えたりしていく過程は、言葉足らずではありましたが、新しい発見や勉強になり、今後の大きな課題になりました。結果としては、誰のために何が大切なのかという看護の基本に戻れば、心地よさを感じながら、毎日を生活していくための看護援助につながっていくように感じられました。

他職種の関わりとして、栄養士とボランティアの方から話を聞く機会を作っていただきました。緩和ケアに対しての思い、自分の役割、チームの中の位置づけがしっかりしていて、頼もしさを感じることができました。自分の施設では他職種の方と話し合う機会が少なかったので、今後は話し合う時間を持ち、互いの役割を理解し合いながら協働できたらと思いました。

認定看護師として臨床に戻った時、自分の言動に影響力が出てくるということも感じることができました。責任を持って話をし、行動化できることが大切であり、そのための努力を続けることが必要であると課題の大きさを痛感しています。違うホスピス・緩和ケアを経験し、自分の傾向を振り返られたことで自分のあり方、役割としての方向性も言葉として表現していかなくてはならないことを感じています。

1週間訪問看護ステーションで見学実習をさせていただきました。在宅での患者さんと出会うことも初めてで大きな学びになりました。家にあるものをケアや処置にさり気なく使用し、患者さんや家族の話をうまく引き出しながら状況を評価していく技術は、病棟においても必要だと感じました。訪問時の的確なフィジカルアセスメントや判断力は看護能力と責任を必要とします。また、家族の介護能力を支え引き出していくことが、重要であることを実感しました。家族の負担を理解し、これからの介護への気力を家族に維持してもらうための支援が短時間で展開されているのを感じました。病棟で働いていると、在宅の方が自分らしく過ごすことができるのではと思っていたところもあったのですが、決してそうではないと感じられる家族もありました。もちろん、在宅の利点をうまく使って、とてもよい笑顔で、自分らしく暮らしている方もいました。

今後、訪問看護との連携を作り、在宅へ移行するにしても、病棟看護婦として必要なフィジカルアセスメント、ケアや処置の準備、患者・家族への指導などを考えていきたいと思っています。

 

 

 

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