これには医療スタッフの十分な協力体制が必要です。それぞれの情報を持ち寄り、それぞれの立場からできることが責任を持って行われてきました。独自性や専門性が発揮されていることがよくわかりました。
次に症状コントロールができることが最終目標ではなく、症状コントロールができることは大前提であり、その上で次にどのようなケアが必要なのか、看護の面ではどのようなケアができるのかを考えていかなくてはならないのだと感じました。さらに薬だけでなく、私が以前から学びたいと思っていた補助的療法についての可能性も考えることができました。
そして患者の全体像を理解すること、話を理解することの難しさを再確認しました。患者の気持ちに沿って話を聴くこと、これは今の私には意識しないと常にできることではありません。しかし、ホスピスのスタッフはそれを自然に行っていました。これはホスピスケアに必要な資質の一部なのだと思いました。
実習で特に印象的だったのは、コ・メディカルと言われる他職種の活動です。ボランティアの人々や理学療法士などと接するなかで、他職種との協働によるチームアプローチが、より質の高いケアの提供につながるのだと実感しました。
研修で学んだこと、今後の展望
今回の研修で、私はホスピスケアの理念は、単に終末期だけではなく全ての病期にも通じるものがあると再確認しました。そしてやはりどの医療施設にもその精神は必要であると考えました。現在ホスピスの数は全国で増加しているということですが、それでもそのベッド数は何十万というがんで死亡する人の1〜2%にすぎないのが現状です。つまり、ほとんどの人が一般病棟で死を迎えているということになるのです。ホスピスや緩和ケア病棟を持たない病院から、私がこの研修に参加している意味はここにあると思います。一般病棟でもホスピスマインドを持ったケアができ、より質の高いケアが提供できるようになるために私は努力していかなければならないと考えています。
そこでどのように今回学んだことを活かしていけば良いのか、自分の職場の状況から考えていこうと思います。私の職場にはホスピスはありません。だからいろいろな病棟に終末期の患者が入院してきます。それらの患者に対し、各病棟が個々に勉強していますが、その努力には限界があり、学習会で学んだ知識を病棟内に伝達するのさえうまくいっていないのが現状です。全ての活動が病棟単位にとどまっているのです。また医師の協力も得られず、ケアの質の向上はなかなかできません。
しかし、大学病院であることから、麻酔科・放射線科・精神科・リハビリ・化学療法科といった部門はそろっています。特にペインクリニックの医師や、リエゾン外来の医師とは既に緩和ケアのチームを作ろうと一緒に活動を始めています。薬剤師や栄養士にも協力的なスタッフがいます。このように、現在はバラバラですが、大きな力となる資源が十分にあります。
そこで私が学んできたことが、病院の全ての人に役立ててもらえて、看護の質が上がるように、まずこのようなバラバラな力を結集しようと思います。ホスピスケアではチームアプローチが重要であると学んだので、前述した協力者とともに緩和ケアチームを作ることから始めようと思っています。
そして、私の学んできたことを病院全体が活用できるように、コンサルテーションのシステムを確立させます。これは既にいる認定看護師が確立しているので、難しくないと思います。各病棟からの相談に対してチームで対応していくことにして、病棟の枠を外した活動を行っていこうと思っています。