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症状コントロールにおいては、同時に副作用症状についても見落とさずケアしていくことも医療者としての責任であるとともに、チーム医療が存在することを忘れてはならないと考えます。患者から得た情報をチームとして共有し、より高いQOLとなるように、医師だけに頼るのではなく、看護者もより深い知識を持ちながら、カンファレンスや他職種との連携・調整役として関わることを実習で実感することができました。

また、身体の変調などにより日常生活上の機能など失うことが多くなっていくと、看護者として何かしなければという思いにかられやすいものですが、全人的な視点で捉えることと、側にいることの大切さを学ぶことができました。それは看護者として、死が避けられない現実に一緒に立ち止まり、側にいることが患者を支え、孤独にさせないことにつながり、救うことができない命の時間に癒しをもたらすことが感じられたからでした。

何不自由なく物が豊富にあふれ、医療が進歩している社会の中で、最後に人を救えるのは、物や薬、器械ではなく、人間が持つ心ではないかと思います。

病棟実習の他に、在宅ホスピスとして訪問看護実習を、おもて参道訪問看護ステーションで行いました。スタッフの方々の生き生きとした表情にまず驚き、パワーを感じることができました。終末期でありながら自宅で療養をしている方の家に訪問をしたところ、患者・家族の表情がとても穏やかであったり、明るい雰囲気があり、一般病院にはないものを感じられ、ここでも驚きがありました。病院とは違い、患者・家族が主体であることが強調され、自分達はゲストの立場であることで、いかにこの家族にとってよいケアとなれるのか、限られた資源のなかでコーディネートしており、まさに看護のセンスを発揮できるところではないかと思います。患者を支える家族の力が大きく存在し、社会的なサポートと症状コントロールを図れることで、患者のセルフケア能力を少しでも保ち、その人らしくあるための環境につなげていけるからだとも考えました。

訪問看護は、その場でアセスメント能力や予測性を求められることが多く、より専門性の高い知識や技術を統合したものが必要であり、症状コントロールを病院よりも一層良くしていくかが課題であると考えます。訪問看護婦はひとりで行動していくので、患者・家族に的確な指導を行う力や信頼関係を築ける人間性が要求されると思いました。

今回、ホスピス・緩和ケア病棟そして在宅ホスピスの両者には利点も欠点もあることを知り、患者・家族が何を望むか、状況に合わせてよい方法を選択できるよう医療者として関わっていくことが必要であると考えました。

 

研修での学び

 

6か月間の研修を通して学んだことは、講義では、共通科目としてリーダーシップから看護管理、看護論など、専門基礎から専門科目では、腫瘍学から危機理論、家族援助論、症状マネージメントから進行がん患者の心理過程について、またチームアプローチや倫理的側面からの考え方など、約4か月間で420時間の時間をかけて様々なことを学びました。

私にとって症状マネージメントは、専門職として責任を持つことであると考えるとともに、患者の人権を守ることにつながるものではないかと思います。今まで臨床の場でなにげなく倫理的な問題に出会っていたことに気づき、今後その問題に対しどのように対応すべきなのか、その手段を学ぶことや、自分がこのコースに来る前にぶつかっていた問題に対し答えが出せたような気がします。そして、家族看護は患者・家族をひとつのユニットとした捉え方で支えていくことであると新たに学ぶことができました。

緩和医療は全人医療と言われるように、身体面だけにとどまらず、心理・社会・霊的な側面にまで及び、広い視野を常に持ち続け、医療だけにはとどまらず、社会の動向も常に見据えた知識が必要と考えます。

 

 

 

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