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症状コントロールの重要性を学んで

 

徳冨 直美

 

受講の動機

 

私は一般病院に勤めている中で、がんで苦しんでいる患者と家族を目の前にして、自分が何をすればよいのか迷い、何もできない無力感を感じました。患者はがんの進行に伴い症状コントロールが困難となる一方で、今考えると霊的な言動にまで精神状態が追い込まれたケースもあり、今まで看護婦として働いてきた経験はあるものの、それまでの知識や技術だけでは不足していることに気づきはじめました。

がんは不治の病であり、苦しみや悲しみを与える病気という印象があります。また、慢性疾患でも身体の変調は来たしていき、人はなぜ、苦しんで死んでいかなければならないのだろう、苦しまないように亡くなっていけることはないのだろうかと、今までの経験を振り返るようになりました。そして、患者のケアを行いながら現状から少しでも安楽につなげられないのかと思う気持ちが強くなる中で、医師に相談したが答えが出るわけではなく、誰に聞けば答えが出せるのかわからないまま、月日が流れていくばかりでした。そのような中で、日本看護協会のホスピスケアコースのことを上司から知ることができました。

もし、ここで学ぶことができるのであれば、現在の答えが出せない部分や同じように悩んでいる同僚に自分が得た知識を活用し、アドバイスができたり、何か変化をもたらすことができるのではないか、など様々なことを考えるようになりました。また、一般病院でがんや慢性疾患で亡くなる患者が多い中で、ホスピスや緩和ケア病棟という場だけではなく、チーム医療と人権を尊重したことがもっとこの現場に浸透できるようになればと思い、このコースを受けるに至りました。

 

実習の成果

 

実習病院は、院内独立型である国立療養所東京病院でした。はじめの成り立ちがエイズホスピスというところからの設立ですが、現在は緩和ケア病棟として、院内の転棟から紹介入院まで広く受け入れていました。緩和ケア病棟の専属医師はいますが、院内の転棟の場合は主治医制を導入しており、病棟が変わっても医師と患者・家族の関係が断ち切れることなく、良い関係を保ちながら療養することができていました。

病棟にはつねに音楽療法の一環として、時間配分を考慮した音楽が静かに廊下に流れており、病棟全体にゆっくりとした時が流れているように感じられました。ボランティアなどの資源や運営的な面に不足な点がみられる中で、各スタッフが不足な面をカバーしたり、組織にアピールしたりと活動を行い、理念を持つことの重要性を再認識することができました。

今回、実習では私は症状コントロールの中でも特に疼痛コントロールについて学びたいと思いました。痛みは主観的な体験と言われており、効果的な疼痛コントロールを行うためには、患者の訴えを信じること、聞くことが大切であり、それがどのように患者の生活背景に影響を及ぼしているのかを考えていくことが重要になってきます。それには、痛みを客観的なデータとして残すことと、的確に専門性をもった視点で判断していくアセスメント能力が重要であり、それを疼痛コントロールにつなげていくことを改めて学びました。

 

 

 

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