訪問看護が病棟と違うところは時間や経済面にある程度の限界があり、患者さんや家族のセルフケアの能力が患者さんの在宅での生活の質に大きく影響を及ぼしてくるというところである。病棟では、サポートとしての環境がある程度準備されているため、自宅での環境においてどれだけのケアが提供できるかという捉え方には今まで認識が浅かったと気がついた。病棟では、医師をはじめ他の職種との連携で相談やサポートを受けることができる環境にあるが、訪問看護婦は患者さんや家族のアセスメントを限られた時間の中で行い、必要と判断されたアプローチを行わなければならない。大体のケースは週に限られた時間での訪問となるため、訪問を行っていない期間も考慮に入れたアセスメントが必要になり、その責任も大きい。できるだけ自宅でその人が望んだ環境で過ごすことができるためには、入院の時点から自宅の環境や家族のセルフケア能力について、その家族ができる可能なことという目標が意味をもってくることがわかった。
研修を通して学んだこと
ホスピスケアについて多くの講義を受け、実習を経験し、多くの方の意見や助言を受けてきた。研修全体を通して学んだ大きなことは「自分の立っている位置を知る」ということである。物事を考えたり、書いたり、人との関係においても、研修では悩むことや進んでいく方向性を見失いそうになることもあったが、講師の方や教務の先生、実習施設の指導者やスタッフの方々の意見や助言は最終的に自分が立っている位置を自覚するということに繋がった。自分の位置を自覚して物事に取り組むと見えてくることも多かった。
研修前の自分を振り返ってみると、かなり理想に燃えて、ホスピスケアはこうあるべきというある種の型にはまったところがあったのだと思う。講義の中でホスピスケアがまだ発展の余地が多くあるという立場にあるということを知ったことで、自分が知る必要のあることはまだまだ多く、いかに井の中の蛙であったか自覚した。
そういう意味で変化してきたところは、自分の中に結論を急がずに肩の力を抜いて地道に考えていこうという気持ちが少しずつ出てきたところかもしれない。講義やレポート、試験というカリキュラムを経験して最も学びになったと思ったのは、実は放課後のフリータイムであった。講義の時間内ではまとめきれなかった考えがクラスメイトとのやりとりの中で見えてくる経験も多くした。自分の考えに限定せず、相手の考えを取り入れることで考えが広まっていくという経験は、この研修でなければ味わえないものではないかと思う。この充実感は重要である。ホスピスケアが社会的に認知を受けるためにはホスピスに関する情勢や方向性などについて情報を得ていくだけでなく、他の医学の領域や医療に関する社会的情勢とホスピスケア、ホスピスケアの動きと自分の施設、自分の施設と自分が目指すホスピスケアと大きなところから小さなところまで位置を自覚しながら考えていくことが重要になってくると思う。それが今の自分が考えることができる最大のことであり、自分らしさを見失わないということにも繋がっていくのではないかと思う。
認定看護師の研修生のクラスでは、教室に入るだけでホッとするものがあり、自分にとってクラスメイトは癒しの存在であったと思う。ホスピスケアの認定看護師はまだ少ない現状ではあるが、それゆえ今後もネットワークとして情報交換を行い、繋がりを大事にしてお互いをサポートし合っていくことが、ホスピスケアの質を高めていく基盤になっていくのではないかと思っている。
今後の展望について
今後に向けての展望は、改めてというより、もう一度ホスピスにおけるスピリチュアルケアと家族看護について考えていくということになると思う。これは個人的な課題であると同時に、自施設におけるホスピスケアが目指す目標となっていくものではないかと考えている。