チームアプローチにおけるチームメンバーには多くの職種が参加していたが、実習施設ではそれぞれの職種に対して担当の看護婦が決められていた。病棟で行いたいことや病院全体での行事など、定期的にミーティングを持ち、その経過や方針を病棟のミーティングで報告をしていた。それぞれの職種のメンバーがホスピスケアにどう関わりたいと考えているかを知り、またそれぞれの職種に対してホスピスのメンバーもどう考えているか伝えていく役割が担当の看護婦には求められているのだと思った。このことは、ホスピスの看護婦が患者や家族に対して全人的な視野に立ったケアを提供できるためのチームのコーディネート役を担っていくための大切な基盤になっていると理解した。
病棟ではカンファレンスの形態がいくつかあり、目的によって時間や内容が違っていた。特に週1回の全員の患者についてのレビューや他の職種が参加する月1回の緩和ケアカンファレンスに参加したことでチームアプローチにおける看護婦の役割を改めて自分の中に明確にすることができたと思う。メンバーそれぞれが自分の役割を果たすことができて初めてチームアプローチは実践可能になると思われた。
ホスピスケアでは患者さんだけでなく、家族もケアの対象として捉える必要があると言われている。この考え方は自分が今まで家族は患者さんを支える役割があるのだという考えに縛られていたことを自覚させてくれた。家族の構造を理解し、家族の誰をケアの対象としていくのか、介入の焦点をしぼることができることで患者さんの心が癒されることに繋がっていくのではないかと仮説的に考えている。
ケースとして受け持たせてもらったもう一人の患者さんは家族関係が広く、治療についての説明や同意を得ていく過程で家族側へのアプローチにプライマリナースが困難を感じているという状況であった。自分の課題が家族看護であるということからこの問題についてプライマリナースと一緒に考えていくというところから関わりをはじめさせてもらった。患者や家族の危機段階、家族間における真のキーパーソンの存在、家族間におけるケアの対象者について自分が捉え、考えたことを記録にまとめてプライマリナースに渡し、感想を聞かせてもらうという形をとった。
プライマリナースや医師が患者さんや家族と関わる時は同席させてもらい、プライマリナースとはお互いが不在の時の情報をやりとりしていった。家族の危機段階や介入の対象と考えられる家族との関わりについてプライマリナースが記録していたところは、その家族を理解する上で意義のあるものとなった。
実習施設の指導者はがん専門看護師で、施設全体のコンサルテーションやホスピスケアについて教育、指導的役割を担っている立場にいた。実習施設のスタッフに対するプレゼンテーションにおいては、ホスピスケアにおける看護モデルや理解について的確な指導を受け、スタッフからもフィードバックを受けることができ、今後のホスピスの看護の独自性を考えていく上で学びになった。また婦長という病棟の管理者でもあったことから、病棟運営、方針、スタッフの教育、医師へのアプローチの実際をモデルとして学ぶことができ、指導のスタイルや資格をもって働くという厳しさについても助言や話を聞くという機会を得ることができた。
訪問看護は、病棟の実習と並行して週1回行われた。終末期の方もいらしたが、慢性期の方も多く、講義で学習した訪問看護の実際を経験を通して学ぶことができた。自分は訪問看護の経験がなく、今回初めて経験することが多かったが、今後自施設においても訪問看護ステーションとの連携の重要性が求められてくることを考えると、今回の実習で病棟と訪問看護とのシステムがどう効率よく進められたら継続されたケアが提供できるのか、訪問看護を実際経験してみて初めて見えてきたところも多かった。