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ホスピスケアにおいて目指していきたいこと

 

総合病院衣笠病院ホスピス

手島 美子

 

受講の動機について

 

当院のホスピスが1998年6月に開設され、ホスピスケアの充実を図るため認定看護師教育課程への研修を施設から要請されたことが受講にあたってのはじめの動機である。施設から研修を要請されたことで自分がこのコースで何を学びたいかと改めて考えてみた。

自分がホスピスケアを目指したきっかけは、生きていく意味や目的、家族の意味について考えることがあったというところが大きく影響していたと思う。死を迎える人達の話を聴けるということはケアにあたる自分が人の言葉でなく、自分の言葉で死生観や物事に対する価値観を語り、自分が家族との関係と向き合うということが重要なのだということがわかってきた。死を前にして人は人生の再構築を図ると言われている。再構築を図る時、人間にとって大切で必要なことはスピリチュアリティーを高めるということとスピリチュアルペインが癒されるということであると学んだ。自分がホスピスケアを目指していくことと自分の課題と向き合っていくことに共通性を感じた時、ホスピスケアが自分にとって意味のあるものになった。ホスピスケアについての多くの考え方を学びながら自分の課題であるスピリチュアルケア、家族看護について特に学びを深めたいと考えたことが個人としての受講の動機である。

 

実習の成果

 

実習施設は、淀川キリスト教病院ホスピスと同院の訪問看護ステーションである。実習は1週間のうち4日間を病棟で、1日を訪問看護ステーションという形で6週間行われた。

初めは病棟の体制に慣れるという目的でスタッフからケアの実際を学ぶという形で、ケアを一緒に行わせてもらった。受け持ちの患者さんが決定するまでは基本的にはこの体制で実習が進められた。途中からはその日の受け持ち患者さんについてのケアプランをカンファレンスで発表したり、ケア評価のカンファレンスでは情報提供や評価について話すという機会を得た。チームの体制がプライマリナーシングとチームナーシングの併用を取り入れており、症状コントロールや必要なケアについて医師、リーダー、プライマリナースのそれぞれが情報を交換し、話し合っていくプロセスをプライマリナースやその日の受け持ちナースと行動し学ぶことができたと思う。

チームアプローチの実際では、施設の理念に基づいた全人医療が実践され、宗教福祉部と患者さんが自然に関わりを持っている場面を多く見る機会を得ることができた。ホスピスの看護の独自性は人間のスピリチュアルに関わるというところにあると考えているが、特別な信抑を持たない自分には信抑については理解が難しいところがあった。自分がケースとして受け持たせてもらった患者さんの一人がキリスト教の信抑を持っていた方で、死を前にした人が熱心な信抑によって心が癒され、自分の死を受け入れることができるということを私はその患者さんの真摯な生き方から教えていただいた。その人が信抑に価値を置いている場合、宗教的ニーズにホスピスが応えるということはスピリチュアルケアにおける重要な役割の一つであるということを実習を通して自分の言葉で語ることができるようになったと思う。このことは自分にとって大きな収穫だった。

 

 

 

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