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まず、人間の自律ということの意味をチーム全員が考えることが可能になるよう、問いかけを行っていくことが必要であると考えています。医療者優位の価値観の押しつけではない医療とは、また患者の意思を受け止めるとはどのようなことであるかを考えていかねばならないと考えます。そして、人間の側で意に沿ったケアを提供できるよう働きかけていくことが、本来あるべき私の役割であると考えています。そのためには、人が自分らしく判断を行えるよう、身体的に症状をコントロールし、周囲の環境を整えながら支援していくことが必要であると考えます。私は、このためにチーム全員が症状マネージメントに対しての知識を共有し、常に身体症状の安楽を保つことができるよう働きかけることが必要であると考えています。

チーム作りとしては、現在私達の緩和ケアチームを構成している医師と看護婦がそれぞれの専門性を尊重し、信頼し合える関係を作り上げること、更に他職種の参画を求めることを課題としています。これに対しては、チームの学習意欲が向上するよう、個々の能力を尊重した上で、次のステップとなるべき学習方略を提示することで専門性を高めていきたいと考えています。そして、相手を批判するのではなく、長所を認めることからチーム内での互いの信頼感を構築できるよう努めたいと考えています。

また、活動の範囲は緩和ケア病棟に限局せず、病院や地域社会に対しての活動も今後重要であると考えています。同じ病院内にも、ホスピスケアを受ける対象である患者は多数おります。いや、すべてのケアの原点はこのホスピスケアにあり、その理念を共通認識することは、医療という現場の中で必要不可欠であると考えています。このため、病院内の学習会等での意見交換や、各病棟での学習会などへの参加を繰り返していくこと、院内で卒後教育の一環として行われているターミナルケア研修に参入していくことが、有効であると考えています。

地域社会に対しても、まず地域住民に対して、人生の終末の場を選択する選択肢のうちの一つに緩和ケア病棟が入るように、ホスピスや緩和ケアの概念を正確に伝達していくことが必要であると考えます。現在もインターネットや新聞、テレビなどでの広報活動は行われておりますが、死に行く場所としての印象を強くもたれているように受け止めています。それを最後まで自分らしく生きることができる場所として捉えていただけるよう実績を作り、そして私達の理念やケアをもっと知っていただけるよう、患者の会などへの参加を行っていこうと考えています。そして、その中でもホスピスケア認定看護師として、患者や家族のケアを行っていかねばならないと考えています。

今回、このように6か月という長期間にわたり、様々な学習する場を与えていただきました。この研修で得た知識は数多く、どれもすべて今後緩和ケア病棟に携わっていく者として重要なものでした。また、知識と同時に私はこの研修で20名のホスピスケアに携わる貴重な仲間を得ることができました。この仲間は、きっと今後も全国で支え合って、より良いホスピスケアを提供していくための、非常に強い力となると思います。

このような、知識と仲間を得る機会を提供していただき、日本財団に対し感謝の言葉を述べ、終わりの言葉とさせていただきます。

本当にありがとうございました。

 

 

 

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