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専門性が集約されたチームの確認

 

和歌山県立医科大学附属病院 

武居 美佳

 

受講の動機

 

今回、認定看護師教育課程のホスピスケアコースを受講し、学ぶ機会を得ました。この認定看護師教育課程の研修では、認定看護師の受験のためということだけではなく、一人の看護者として、一人の人間として、人間とはどういうものであるのか、より良いケアを提供するためには何が必要か、看護とは何か等を改めて深く考えることができました。

ここでは、私が研修の受講を希望した理由や研修・実習での学びを振り返りながら、今後この学びをどのように活用していくかを考え、記載したいと思います。 

私が、この研修を受講するきっかけとなりましたのは、一つは前々から終末期ケアに興味を寄せていたことがあります。私は日頃看護を行う中で、治療方法がなくなり医師の足が遠のきがちな終末期患者に対し、看護に携わる者として何ができるのであろうかと常々考えておりました。そのような日を過ごす中で、ホスピスケアや緩和ケアに関わる学習をすることの必要性を強く意識し、研修などへの参加の希望をしておりました。

同時に、時期的にも当病院の中に緩和ケアを開棟することになったこともあり、看護スタッフのホスピスケアに対する学習が必要とされている状態でした。私の勤務病院の所属する県では、当病棟が初めての緩和ケア病棟の開棟であり、県民の期待も大きく、質の高いケアの提供が必要とされておりました。このため、一人ひとりのスタッフに求められる知識や技術は、開棟と同時に熟練したものが求められているのに対し、私達は自己学習を重ねながらも、常に判断に迷いを感じながら歩んできておりました。このような中で、私は学習することにより、より根拠のある適切なケアの提供が可能となると考えました。

これに対し、緩和ケア病棟スタッフとして配属されることになった私が、この研修を履修することで、自分一人の学びではなく、緩和ケア病棟を構成するスタッフ教育と病棟づくりを担う一端となることを目的に病院により選出され、この認定看護師教育課程のホスピスケアコースを受験することとなりました。そして、この研修を受講することが決定しました。

 

実習の成果

 

この研修の中で、様々な各論的な知識や技術の習得も、もちろん現場に反映するために非常に有意義に感じました。しかし、私が一番強く印象づけられたのは、自律した存在としての人間という人間の捉え方です。私は、もともと治療優先の医療現場の中で、看護者は患者の生活を守るという擁護者としての立場にあると考えておりました。これは、一見患者の立場を守るように見えながらも、守る立場と守られる立場というように分けており、対等な視点で物事を考えていませんでした。また、人間は常に自分自身で自分の人生を選択し歩んでいくものとして捉えることができず、看護者が働きかけることで変化を起こしていく存在として捉えておりました。 

しかし、この研修の中で、人間の人生はその人のものであり、誰のものでもないこと、医療者というだけで、それに影響を与えることができるということは思い上がりであるということを理解するきっかけとなりました。

 

 

 

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