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一秒一秒の大切さを感じた実習 ─これからの私─

 

東海大学医学部付属病院

清野 幸子

 

受講の動機

 

これまで私は大学病院で8年間働いてきました。今までに腎移植や血液透析を行う腎泌尿器科病棟とICUの勤務を経て、現在も所属している血液内科病棟に配属されました。そこでは、白血病などのさまざまな血液疾患の患者や骨髄移植前後の患者と家族に関わってきました。患者は、長期入院と大量の化学療法などの治療を受け、心身ともに苦痛を持ち、死に対しての不安と闘いながら毎日を精一杯過ごしていました。また、家族も患者の回復を強く祈りながら闘病生活を支えていました。

日々の中で、高度な治療をしても効果がなく、若くして死を迎える患者と遺される家族との関わりを体験し多くのことを学んできましたが、いつもこれで良かったのだろうか、もっとその人らしく生きられたのではないか、家族のサポートが不十分だったのではないかと考えるようになり、倫理的問題や患者と家族の苦痛を緩和できないことにもどかしさを感じていました。また、これから看護婦を続けていく上で、自分の中で専門性を身につけたいと考えていました。そんな時、所属長より各認定看護師の説明があり、ホスピスケアコースがあると聞いて私が学びたいのはこれだと思い希望しました。病院からは国内研修扱いとして送り出していただくこととなり、この研修を受講しました。

 

実習の成果

 

<病棟実習>

実習場所:東札幌病院(PCU病棟)

今回、臨床実習で自己の課題を持ちながら看護実践を行いました。課題としては、患者の苦痛症状(身体的苦痛(疼痛)・精神的苦痛/スピリチュアル)を的確にアセスメントし、緩和することと、患者と家族のQOLを高めるための関わりができ(在宅移行の関わりなど)、これらの関わりを有効にするためのチームアプローチを学ぶことでした。

患者の苦痛症状のアセスメントでは、どのような苦痛があるのか患者の状態を全体的にアセスメントし、一方向からではなく多角的に考えることができたと考えます。そのなかで、優先して緩和する必要があった身体的症状の骨メタによる痛みでは、オピオイドの使用方法やNSAIDsの併用方法を学びました。今まで薬剤に関しては、指示された量を確実に投与することしかできていませんでしたが、痛みの種類や性質(がん性疼痛・神経因性疼痛)により薬剤を選択していくことや効果を評価し、増量や変更をしながら患者の痛みを取っていく実際を学びました。また、看護婦側からアセスメントしたことも含め言語化し、医師との話し合いをするなど、疼痛コントロールについてのマネージメントに関わることができました。

精神的苦痛としては、入院や告知による精神的不安や死への気持ちを表出したときに、ありのままの患者の思いを聴くという関わりができました。今まで話を聴く時に、表面的な言葉でしか受け止めていなかった自分や、医療者の立場や価値観で患者の思いをさえぎっていた自分に気がつくことができたと考えます。また、患者の言動には、スピリチュアルな部分が入っているという視点で、側にいられたことは自分の中で大きな変化であり、患者対看護婦の関係だけでなく、人間対人間として関わることの大切さを実感することができました。

 

 

 

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