患者の緩和ケアに日々忙しく従事されているスタッフの皆様への感謝の気持ちも含めて、今回の貴重な実習の成果をまとめてみたいと思います。
今回の実習は自分の勤務していたホスピス以外での緩和ケアを知る初めての機会でもあり、とても貴重でした。更に今までの施設にはない建物などの環境が整っている施設でもあり、緩和ケアに必要な要素の再確認をしたようにも思います。西群馬病院では、その環境を生かして病室の窓を大きく取り、自然の景色が眺望できるようになっていました。更に病棟全体のスペースを広く取ることで、ゆったりとした空間を創り出しており、安らげる環境でした。実際に受け持った患者も趣味でもある野鳥観察が楽しめると言い、山林があるこの環境を堪能していました。どんな環境でもよい点はあるとは思いますが、やはりゆったりとできる空間を創り出すことは、緩和ケアにおいて重要であると感じました。
看護婦スタッフが時間を作りだし、毎日のお茶会を催していました。これには緩和ケア病棟の理念を共通認識した栄養士の協力があり、四季を感じられるメニュー作りや病棟調理という企画では、患者とスタッフが一緒に調理をし、コミュニケーションを図るなどの工夫がされていました。緩和ケアにおいては一般病棟のような、いかにも病院という環境ではなく、患者が人間として生活していく場所であることを医療者が忘れてしまってはいけない、生活の場所をいかに創り出していけるかが重要であると再確認したように思います。看護婦として症状の緩和以外に人を看護していくためには、そのことが必要であると感じました。
他の施設での初めての看護経験であったので、今までの価値観を広げる機会ともなりました。今までは何気なく行っていた看護や医療行為でも更にその質を向上させるためには、常に自問自答しながらケアを考えていかなければいけないと考えさせられました。看護の対象は常に異なるので、今までの方法が必ずしもよい結果をつくりだすとは限らず、その都度多くの医療者で緩和ケアについて討議していく必要性を感じました。違った環境での実習で、自分自身の価値観についても考える機会となり、多少ではありますが、自らの価値観を広げることができたように思います。他施設での緩和ケアの実際を知ることで自分自身を振り返ることや、これからの課題が明確になり、とても貴重で重要な体験になりました。
研修を通して学んだこと、今後の展望
研修を終えてこの半年間を振り返ってみると、今までにない時間を体験してきたように思います。実際に勤務していると勉強するためにゆっくり時間を取ることも容易ではなかったので、勉強に半年間も使うことにはじめは違和感があったのかもしれません。しかし1か月もすると病棟の看護から離れてリフレッシュした気分で研修に臨むことができました。そのような研修での大きな学びの一つとして挙げたいことは、まず、自分自身の位置を再確認できたことでした。今までのホスピスではジレンマを感じながらもこじんまりとした環境の中でのんびりと看護をしていたように思います。他の緩和ケアに関する情報や実態も気になりながらも呑気に構えていました。緩和ケア以外でも看護自体に関することに視野狭窄が起きていた自分を感じました。医療は日進月歩でありながら日々の看護に流されていました。全国各地から研修生が集まっていますから、今までの自分の周りにはいなかった人もいて、自分の世界の狭さを痛感しました。更に自分の位置を知ることは、自らの強みや弱みを明確にすることにもつながり、研修をするにあたり貴重な情報でした。
認定看護師としての役割でもある実践・指導・相談を遂行していく上で、自分自身の看護を振り返り、整理していく能力は重要です。様々な理論を学び、これまでの看護の実際を振り返り、理論と結びつけていく作業は、慣れないことではありましたが、自分の看護を整理していく上でとても重要なものでした。