自分の価値観を広げていく貴重な場に
杉浦 節子
受講の動機
私のこれまでの看護経験は、一般病院の内科病棟を4年、その後ホスピス病棟を2年半という短いものです。その経験の中からこの研修を受講しようという動機になったことについて述べていきたいと思います。
まず、4年という一般病棟での看護経験の中で、緩和ケアの視点が重要視されていない現状に対して患者看護のジレンマが増してきたことから、実際の緩和ケアを経験したい、というとても短絡的な動機からホスピスヘ異動しました。そこで経験したホスピスでの看護は一般病棟とは異なり、患者がいかに安楽に過ごせるかという視点が重要視されているものでした。しかし、そのホスピスという環境の中での看護は何もわからない状態から入ったので、見よう見まねで看護をしてきたというのが実際のところでした。その現状とは裏腹にホスピスでの先輩看護婦達が辞めていくにつれ、何も自信がない私でさえも他の看護婦より経験が長いだけで役割モデルを期待されるようになり、とてもプレッシャーを感じてきました。更に自分の緩和ケアの看護技術に対しても、果たしてこれでよいのだろうかという思いを抱き、緩和ケアの実情に対しても、もっと患者を安楽にするよい方法があるのではないかとジレンマを感じるようになったのです。自分がしたい看護とは何か、緩和ケアとは何か、など自分にとって不明確であるテーマがはっきりしてきました。ホスピスヘの異動動機がとても短絡的なものであったので、緩和ケアや看護についてじっくり考えていく機会が与えられたように思います。
私がこのような状態の時に偶然、緩和ケア病棟の先輩だった方から、この研修の話を聞きました。タイミングがあったこともあり、受けてみようとすぐ心が動きました。短い看護経験ですが、今までの経験を振り返り、自分の看護観や緩和ケアについて考えてみよう、緩和ケアについての最新の知識や技術を習得し、日常の看護のジレンマが少しでも解消できればよいと思い願書を提出しました。研修期間が長いため休職という形で研修に参加することはできませんでしたが、日本財団の多大な補助金があったことが受講の動機の一つでもありました。
実習の成果
ホスピスや緩和ケア病棟を持つ医療機関は、全国で急激なスピードで増えつつあります。その多くの医療施設の中でも、私達の実習のために臨床の場を提供して下さった10か所の施設はホスピスの老舗とも言われる施設から、開設して間もない施設までそれぞれに様々な特色を持った施設ばかりでした。その中で私が実習施設として希望し、実際に実習させていただいたのは、群馬県伊香保温泉の中にある国立療養所西群馬病院PCU病棟でした。この施設を希望した理由の一つとして、緩和ケアをしている中でも症状のコントロールが難しい症状である、呼吸困難感や倦怠感などを専門にしている医師がいることで自分の看護に役立てたいと思ったこと、更に緩和ケアにおいて重要な、建物などの環境がとても充実している緩和ケア病棟での看護の実際を体験して、環境が患者の生活に与える影響や質の向上について考える機会にしたかったことなどがありました。