日本財団 図書館


その結果、ホスピスケアとは「ホスピス」という場だけで行われるケアではなく、患者や家族が持つ様々な全人的な痛み(身体的・精神的・社会的・スピリチュアルな痛み)に対して行われる「緩和ケア」全体を意味するものだと理解しています。緩和ケアに対する考え方、人間にとって生きる意味や、誰にも訪れる死が安らかに迎えられるにはどのようにしたらいいかを学ぶことができました。

自施設でも緩和ケアの対象となる患者は多くいます。医療の場全体で、がん患者やその家族が安心して過ごせる環境を作ることはとても大切です。そして、さらにより質の高い看護を提供するために、私自身が組織の中で活用されるリソースとなることが重要です。現在自施設では4人の認定看護師(WOC2名、がん性疼痛・重症集中ケア各1名)が活動をしていますが、残念ながら組織の中で明確な位置づけがなく、ホスピスケア認定看護師がどのような存在なのかという医療者全体の認識も十分ではありません。このことから組織の理念と期待する役割を確認し、既存している認定看護師と連携を持ち、協働しながらホスピスケア認定看護師とは何か、その活動内容や方針、活用方法などを具体的に基準化し、提示していきたいと思います。スタッフと共に考えることは、一人ひとりの価値観や考えを理解し合い、緩和ケアに対するチームとしての共通認識を持つためにも大切なことです。学び得た専門的な知識と技術を持ち、現在行われている看護を概念化し、実践した看護の成果を出し、信頼をされ、活用される存在になれるよう、努力をしていきたいと思います。

しかし実際の活動では、現在の問題を解決・改善するのは困難だと予測できます。研修を修了したことを良しとするのではなく、ホスピスケア認定看護師として役割モデルとなり、一層、自分自身の行動に責任を持ち、常に「患者(家族)にとって望むケアとは何か」を意識しながら、状況に応じ、自分自身をプロデュースできる柔軟性を持っていきたいと考えます。そして今後は、健常者である人々にもいずれ訪れる「自分の最期(死)」をどこで、どのように迎えたいか選択できるように、緩和ケアに対する情報を提供する勉強会などを行っていきたいと考えます。

今回、研修を無事に修了することができました。日本財団からご援助をいただき、感謝をしております。患者さんが安心し、自分の意思で、その「生」をまっとうできる医療の場となるために、ホスピスマインドを共通認識し、それを定着させる活動をしていきたいと考えます。今後もより質の高い看護の提供を目指し、自己研鐙を重ね、ご期待に沿えるよう努力をしていきたいと思います。ありがとうございました。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION