印象的だったのは在宅看護を提供されている患者や家族の方が皆さん、看護婦の訪問を喜び、安心して介護を続けていると感じていることや、担当している看護婦たちもみな、訪問看護婦として誇りを持ち、いきいきと働いていることでした。より質の高いケアを提供するには、ケアを提供するスタッフ自身が良いコンディションであることが重要です。日頃からスタッフとのコミュニケーションを大切にし、ケアの相談を通して医療者自身の悩みや問題に対して共に考え、サポートをしていきたいと思いました。
福岡亀山栄光病院では3人の患者を担当し、看護展開を行いました。一人は病状の進行により膣瘻を形成した終末期の子宮がん患者さんで、5週間受け持たせていただきました。在宅で過ごすことによって起こる数々の問題、がんと共存していく上で繰り返される精神的苦悩、身体症状の悪化から起こった「せん妄症状」に対し、患者や家族の方へ看護援助を行いました。もう二人は終末期の乳がんで、リンパ管浮腫がある患者さんでした。一人は脳転移による片目失明や嚥下障害があり、もう一人は数日で最期の時を迎えようとしている患者さんでした。二人ともADL低下をきたし、家族の方が付き添いをしていたので、苦痛の緩和を優先的に考えながら、患者と家族へ日常生活上の支援を行いました。
担当して4日目に亡くなられた方は、ご主人自身も肝臓がんでホスピスに入院されていて、点滴を受けなながら付き添いをしていました。ご主人は患者さんが亡くなられた悲しみの大きさと、今までの疲労の蓄積から倒れられ、一時的に見当識障害を起こしました。患者さんが亡くなられて3間後のことでした。病院でお見送りをさせていただいた後、家族にこのようなことが起こるとは思いもよらなかったため、私にとっては、ショックでした。家族の悲嘆を理解し、傍らに寄り添いながら、今までご遺族へのケアが十分できていなかったことを反省しました。今後は医療者のブリーブメントケアに対する意識を向上させるとともに、充実したケアを提供できるように、システムづくりをしていきたいと考えています。
また、自分には「何かをしたい、他に何かできるのではないか」という気持ちがあり、時に一方的な考えや価値観の押しつけとなり、患者の苦痛やストレスを助長させる誘因となっていたのではないかと反省しました。治療病院では日頃から、医療者が起こり得る問題を予測して対応することが必要です。しかし、それが必ずしも患者に合った必要な援助でないことや、緩和ケアには正しい答えはないことを実感しました。患者の状況やその背景を的確に把握し、多角的なアセスメントを行い、専門的知識と技術を活かしながら看護実践ができるように学びを深める努力が必要だと考えます。改めて相手の変化を「待つ」大切さとその必要性、難しさを痛感しながら、患者や家族の支援者として、今後は常「自分の見解に偏りはないか」と振り返り、「相手のぺ一スに合わせ、常にそこに存在し続けること」を大切にしながら、繰り返し行われている看護を見直し、自己研鑚を続けていきたいと思います。
さらに私は、治療の専門病院における緩和ケアの発展をどのようにしたらいいかを考え、自施設とホスピスの相違を把握するという課題を持って実習に望みました。その相違とは、ホスピスはチームスタッフ一人ひとりがそれぞれの専門的視点から意見交換することで、決して医療者中心の思い込みで操作することなく、患者の苦痛を最優先に取り除くケアの提供を目指すことを共通の目標として認識し、ケアを遂行していることでした。チーム全貝がそれぞれの役割を共通認識し、コミュニケーションを充実させながら、信頼関係を築くことがホスピス運営においてとても大切だと実感できました。
研修での学び
私はそれぞれの授業で行われた事例検討を通し、自分自身がこれまで提供してきた看護を振り返るとともに、改めて緩和ケアに携わる医療者としての看護観を養い、ホスピスケア・緩和ケアの本質を学ぶことができました。