この実習で私は精神的な苦痛の強い方と接し、何とかその苦痛の緩和に力を貸したいと思うものの、何もできない自分を認めざるを得ず、ただそこにいるだけの辛さと、そこにいることの必要性を学びました。彼にとってはこの病気はあまりにも強い衝撃だったのでしょう。私が関わっていることをどのように受け止めてくれたのか反応を得ることはできませんでした。しかし、私にとってこの実習は一人の患者さんにじっくりと関わることができ、今までのおごりを反省し、とても大きなものを得ることができました。
医師が患者さんの話に耳を傾け、足を運ぶ姿を目にし、看護婦が患者さんとその家族に対しても目を向け、その人の安楽に向けて援助していく姿を見、医療・看護の原点に返ったように感じました。最近は医療の技術が進歩し、ともすれば延命だけに目をもっていかれてしまいます。延命はとても重要なことと思うのですが、そのためにその人のその人らしさが失われてしまうことが多々あることも事実です。学内の授業でも学んできたことですが、その人らしさを保てるように、医師と看護婦とその他の職種が一体になって関わっていくことの重要性を改めて認識しました。
今後の展望
仕事を辞め、再就職ができるのだろうか、自分が求める看護に携わっていくことができるのだろうかと生活への不安はありました。しかし、ここで学ぶことができたことは、私がこれからも看護婦として働いていくにあたりとても大切なものとなりました。日本財団からの援助にも深く感謝しております。ありがとうございました。
今後、私はホスピスケアについて臨床の現場でさらに経験を積みながら学び続け、患者さんがその人らしい生き方をまっとうできるように力を貸せる存在でありたいと思っています。さらに自分自身が実践していけることはもちろんですが、多くの医療者の理解と協力なくしてはできないことでもあります。
ホスピスが日本に入ってきてまだ歴史が浅く、ホスピスを実践している施設でも試行錯誤のところがあるかと思います。ホスピスケアヘの関心が高まるように、身近なところから少しずつ伝え、人材の育成にも携わっていきたいと考えています。私にこのような学びの場と、同じものを志す仲間を与えていただけたことに感謝いたします。