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この研修にきた当初は、秋田という土地も、そこに住む住民も嫌でした。その時は何も見えなくなっていたように思われます。

雪深い北国は、夏祭りやお盆、正月に帰ってくる人たちがいる、それはその人たちにとってはかけがえのない労りの場だということだと思います。私が嫌いなだけで、ここを故郷とする人たちにとっては大切な場所であると気づいた時、秋田のいい面が見えてきたのです。それはそこでの可能性を見出せたといってもいいかもしれません。二つ目に、限られた環境の中で何ができるかを探すということです。できることを探すとは、簡単に聞こえますが、とても大変なことだと自覚しているつもりです。できないと言っていては何も起こらない。何かを起こさなければ何も変わらないということを知っていることは、とても大きなエネルギーになると思います。

もう一つが、自分が実践して見てもらうことです。言葉で伝えることも大切ですが、視覚で訴えることの方がインパクトが強く、興味を持ってもらえると思うのです。興味を持ってもらい、聞いてもらったら、丁寧に言葉で説明をする。こうすることで周囲の人間は理解を示してくれるようになり、また私という一人の看護婦を活用してくれるようになると思います。それはスタッフのリソースとして認められたと評価できるのではないでしょうか。

これらのことは、思い返してみればごく当たり前のことのように思われます。しかし、このごく当たり前なことがなされていなかったのが現実であったと実感せずにはいられません。これらの気づきは、今後就職する環境の中、どれだけ生かされ、活用されるのかは正直わかりません。でも私は看護婦が好きで、看護職に満足を感じています。この思いがあれば、どんなに時間を要しても続けられると思っています。

私はこんな思いを再確認させていただけたホスピスケア認定看護師の教育課程の内容と、それに携わって下さった先生方、そしてこのような環境を提供して下さった日本財団には心より感謝しております。本当に、ありがとうございました。これからどれだけ看護婦を続けていけるのかわかりませんが、看護婦を続けたいと私自身が望むかぎり様々な知識を吸収・消化して、できるだけ多くの医療者に私が学び得た知識と技術を提供できる存在、そしてそこから新しい医療者が看護の質を、医療の質をより発展させてくれるようにバックアップできる存在でいたいと思っています。

 

 

 

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