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研修の学び

 

6か月という研修期間は、常に自分自身と向き合うことの繰り返しでした。私は何をしてきたのか、どうしたらよかったのか、これから何をしていくのか、どのようにすべきなのかを常に考える体験は、時に痛みを伴うものでしたが、それによって確かな手応えを掴んだように思います。これまで私が積み重ねてきたホスピスケアでの経験に自信が持てないでいたのは、私がなれないものになりたかったことに原因があったのです。ホスピスケアはチームケアが基本で、それぞれの職種が自分の専門性で能力を発揮することが大切なのだと話しながら、私自身が自分の専門性を見失っていました。時には医師、また違う時にはカウンセラーなどになりたくもあり、チームも一人で背負い込もうとしていました。共通科目で徹底して自己と向き合い、“看護”を考え、専門科目各論では看護独自の介入を体験学習(阿部先生の補助的療法)することなどを通して、私は看護職なのだということを理解するに至りました。

あたりまえの気づきですが、私自身にはハンマーで頭を殴られたような衝撃を伴うもので、それと同時にスーっと肩の力が抜けて気持ちが楽になることを体感しました。自分のことを振り返ることは、日常的にできていると感じていた私にとって、なぜ今まで気づけなかったのか情けなくも感じますが、それよりも研修を通して、今気づくことができてよかったと考えようと思っています。ホスピスケアという専門領域ばかりを学ぶことに必死で、参加する自分の専門性について考える機会を持つことのなかった私にとって、看護する人として存在するのだという気づきは、自分自身の拠って立つところを明らかにし、今後の活動への示唆を与えるものでした。

実習では、看護は日々の生活援助の積み重ねであることを再確認しました。それは死と向き合いながら生きる人であっても同じことです。患者その人なりの生活史を継続することを支えるためにどのような介入が必要なのかという、対象の個性に応じた知識や技術の選択を改めて学びました。

6か月の研修期間中には、私の修了後の活動を支えるためのネットワークづくりも行いました。共に学んだ19人の研修生の存在は、研修の大きな収穫の一つだと考えます。

 

今後の展望

 

認定看護師は、看護の質向上に向かって変化を進める役割を担っていることを忘れないでいたいと思います。その役割を遂行していくためには、豊富で新しい知識や技術に基づく実践能力や、的確な状況判断と柔軟な対応によるリーダーシップの他、活動を継続させていく力も必要ではないかと考えます。時々自分自身で行動修正するために、活動を客観的に評価する機会として研究会や学会に参加したり、ネットワークを活用し情報交換するなどのリフレッシュを図り、変化者としての信念を持って役割遂行できるよう努力したいと思います。またホスピス・緩和ケアに関する専門領域では、エビデンスとされるものが未だ少ないのが現状であることを考えると、私たちの活動を積み重ねることでエビデンスを確立していくという側面もあるように思います。大それたことではなく、日々の看護実践を評価し、整理することを怠らないで前進したいと考えています。

最後になりましたが、ホスピス・緩和ケアプログラムの普及と発展に理解が深く、私たちのホスピスケアを学びたいという意欲を支え、教育課程に助成くださいました日本財団に深く感謝いたします。

 

 

 

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