(2) レポート提出による評価
ホスピスケアコースの場合、他のコースと違って、レポートを通して緩和ケアやホスピスに関する自己の思考を論理的に記述したり、過去の事例を分析することが求められた。試験で評価できる教科目よりもレポート評価となる教科目が多く、研修生は教育課程中に18のレポートを提出した。試験と同様に60点未満の場合は再提出となり、家族看護学の視点で事例を分析するという課題では複数の研修生が該当した。家族の状況をアセスメントすることは難しく、つい推測で分析してしまう傾向があったと思われる。家族看護に限らずありのままの事実をデータベースとして、看護展開していくことの大切さを数多いレポート課題を通して学んだのではないかと思われる。
2) 実習の評価
(1) ホスピス・緩和ケア病棟での実習の評価
1] 前年度の反省を生かし、平成11年度は実習が始まる前の1週間を準備期間として設けたことで、個人の課題を明確にし、またホスピスケアの本質についてグループで深く考える機会に恵まれたと思われる。そのため、円滑に実習に導入できたと考える。
2] 自己の学びを深めたい事例について、研修生と指導者がよく話し合って決めることができた。実習指導者会議の際に面談し、前もって課題を共有できたことが、効果をもたらしたと思われる。
3] 実習施設のスタッフの方々に、この認定看護師教育課程に関心を寄せていただき、プレゼンテーションの際には、積極的に集まって活発な意見交換が行われた。プレゼンテーションの内容には、ホスピスケア領域における看護技術として、ゲートコントロール説に基づいたマッサージが多かった。疼痛緩和を目的としたリラクセーションテクニックは、ホスピスケア認定看護師として習得しておきたいケア技術の一つである。今年度までは、演習の時間が少なく講義の時間を利用するしかなかったが、来年度は、看護技術を演習時間内に予定したいと考えている。
4] 他職種を交えたチームカンファレンスに参加して、各々の専門性を理解することで、看護の専門性について深く考えることができたようである。ホスピスケアでは、チームアプローチが最も重要であるということを講義で既に学んでおり、臨床の場でその知識を統合する機会があったことは、貴重な体験になったと思われる。
5] 施設によっては、医師が牧師であるホスピスもあり、スピリチュアルペインの意味や“being”の真髄について、理解を深める機会になったと思われる。
6] 帰校日を設定し、多数の研修生が集まることによって、受け持っている事例についてグループ討議でき、各々のホスピスや緩和ケア病棟の理念や方針などを共有する機会となり、貴重な時間になったと思われる。
(2) 訪問看護ステーションでの実習の評価
各ステーションの実習の受け入れがよく、研修生はセルフケア能力や個人を尊重すること、また在宅におけるグリーフケアの場面を見学でき、1週間ではあったがたくさんの学びを得た実習であったと思われる。ホスピスから在宅へ移行するケースを受け持った研修生もおり、最大限に社会資源を活用することによって、患者や家族が望む場所・方法を提供でき、QOLを支える意味について理解できたと思われる。反省会では、訪問看護を通して、ホスピスケアの原点に触れることができたという発表があり、ホスピスマインドについて考える機会になったと思われる。今後、在宅ホスピスケアの普及や発展に向けて訪問看護実習の指導者会議も企画し、期間や実習時間数について検討する必要がある。