2. 「浪華丸」海上運転の経過
海上運転の経過は次のとおりであった。帆走実験中の写真を図4〜8に、実験海域等を図12に示す。

3. 帆走性能計測の方法と帆走ポーラー線図
ある船の帆走性能の基本は、与えられた風向、風速のもとでどの方向へどれだけの速力で走ることができるか、である。それを知るためには船に吹き込んでくる風の方向と強さ、船の運動方向と船速を測ればよい。
本実験の「浪華丸」のような弁才型帆船は大きな面積の、しかも頂部まで幅の広い四角帆をもっているので船上で観測される風は帆の影響が大きく、実際に船に吹き込んでくる風とは方向、強さとも大差がある。この誤差を避けるために本実験では「浪華丸」風上側、船尾斜め後方10数メートル(浪華丸の約1/2船長)を随伴して機走する補助計測艇のマストトップ(水面上高さは浪華丸の帆のほぼ中央)で風向、風速を測り、これを浪華丸の位置に換算して船に吹き込む風のデータとした。この換算には両船にそれぞれ装備する超精密GPS計器(位置精度2cm、方位角0.1度)の記録を事後解析(オフライン)して使用した。
浪華丸の運動方向と船速も補助計測艇の進行方向と対水船速から同様の手順で換算して求めた。
この補助計測艇を使用する方法で得られるデータは風向風速、船の運動方向と船速すべて対水のものであって潮流の影響は消去されている。これは大阪湾のように常時多少とも潮流のある海域での計測には大変都合のよいことである。しかもこの手順で得られる本船(浪華丸)の運動方向は帆走による横流れをも含んだものだから、帆走性能の基本的諸量の計測に関するかぎり横流れ角を直接測る必要がない。横流れの計測は実際面で問題の多いものだから、これまた本船の巨大な帆の影響を避けて風のデータが取れることとともにこの計測手順の大きな長所である。