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6.1.1 吸入

メタノール蒸気の吸入は被曝の最も多いタイプである。燃料蒸気の発生源への被曝は排気ガス、自動車の給油中の排出、および漏出と密閉されていない燃料からの排出が原因となる。給油中やさまざまな交通事情の下でメタノール蒸気に曝される運転手や給油所の作業員にとって、短時間のメタノール吸入の毒性は問題ないとみられる(HEI、1987年)。測定された被曝のレベルはメタノールの8時間許容濃度(200ppm)よりかなり少なく、最高の被曝継続時間は約15分と判定された。150ppmで15分間という最悪のケースでのメタノール吸入被曝に基づき計算された量は、最大量0.6mg/kg体重という結果になっている。この分析は体重70kgの人が安静状態の呼吸速度の2倍で呼吸し、吸入された蒸気の60%が体内に吸収されるという前提に立っている。0.6mg/kgの人体への負荷は通常の果物、野菜およびアルコール飲料の摂取を通じて作られた量(0.3-1.1mg/kg/日)と同様であり(Machiele、1988年)、メタノールの最低致死量の500分の1である。メタノールに関係した活動のほとんどは、さらに低い吸入被曝と人体への負担という結果になっている。200ppm以上で長期にメタノールに吸入被曝した場合、粘膜への刺激やめまい、吐き気、頭痛およびかすみ目等の症状が起きる。一般的に低いレベルの被曝に関連しては明白な健康上の問題はない(USDOE、1991年)。環境保護庁(EPA)の大気の質に関する企画および基準事務所(Office of Air Quality Planning and Standards)は長期の毒性に対してメタノールを評価し、それに7という合成スコアを与えた(スコアは1から100まであり、100が最も毒性が強い)。

米国政府産業衛生学者会議 (The American Conference of Governmental Industrial Hygienist―ACGIH)はメタノールに曝される労働者のために200ppmで8時間という加重平均許容濃度を設定した。許容濃度は物質が空気で運ばれる濃度に関連し、ほぼすべての労働者が、健康への悪影響なしに就業中生涯毎日繰り返し曝されていると考えられる条件を示している。職業の安全および健康に関する国立研究所 (The National Institute for Occupational Safety and Health―NIOSH)の、生命あるいは健康に対し即座に危険性のある6,000ppmという数値より大きな、空気で運ばれるメタノールの濃度への被曝は、労働者が命を落とすことなしに、あるいは取り返しのつかない健康への影響なしに避難することができない条件を示している。これに関連した、空気で運ばれるメタノールの職業上の被曝限度が表6-2に示されている。

表6-2 メタノールの毒性被曝限度(1)

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1) Festa、1996年。a)時間加重平均。b)短時間被曝限度。c)生命あるいは健康への即座の危険性。

 

 

 

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