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上記で検討したモデルと条件を使えば、メタノールの半減期は約60日と推定される。他の評価の中で、河川と池におけるメタノールの半減期はそれぞれ約4.8日および51.7日と試算された;しかしながら、このモデルは揮発の他にも他の移動メカニズムを含んでいた(USEPAOPPT、1994年)。結論として、緩慢な揮発と最小限の吸着にもかかわらず、メタノールは急速に分解されるという、その固有の傾向のため、地表水に残留しないであろう。

 

3.3 メタノール/BTEX混合プルーム

 

BTEX化合物はガソリンの中で最も毒性の強い炭化水素群である。自然で起きるバイオ分解が、土中環境においてこれらの成分の残留を制御している。アルコールとエーテル酸化物の高い濃度が潜在的にBTEXのバイオ分解を妨害することとなる(Salanitro、1993年)。アルコールはBTEXに優先してバイオ分解され、このためBTEXのバイオ分解に必要とされる酸素まで消費することとなる。アルコールはその濃度が高まることにより、土中のBTEX分解生物の集団に毒性や制限を与える可能性がある(Barkerその他、1990年)。

野外でのBTEXのパイオ分解に関するメタノールの影響についての情報はカナダのBordenの現場での研究から利用できる。3つのガソリン(M85、15%MTBEおよび通常ガソリン)を帯水層の中ヘ注入した(Barkerその他、1990年)。476日までにメタノールの大半は分解されたが、メタノール・プルームの中のBTEX化合物はMTBEや非酸化プルームの中と比較し、より高い相対濃度となった。これらのデータから、BTEXのバイオ分解に関し、MTBEや酸化物を含まない地下水の中での分解に比ベ、メタノールの方が分解を遅くさせる働きのあることが推測される。研究室での結果からは7000ppmのメタノールが存在すればBTEXには特段のバイオ分解が起こらなかったが、メタノールの濃度がわずか1000ppmの場合には、ある程度のBTEXのバイオ分解が観察された。メタノールが存在する場合にBTEXが多く残留するメカニズムは、メタノールのバイオ分解が優先されることにより酸素が不足することによる制限から、毒性のあるメタノールの濃度がBTEXのバイオ分解を最初から制限するということに結論づけられた。このような結果は嫌気性の状況の下で、発ガン物質として知られ(Dean、1985年)、最も扱いにくい単一芳香族であるベンゼンの消滅を評価するにあたり、とりわけ重要である。

他の研究室での微小生態系の研究において、BTEXのバイオ分解は1.4%(14,000ppm)のメタノール濃度で悪影響を受け、それより高い濃度では完全に制限されたと報告された(Novakその他、1985年)。結論として、メタノール・プルームと混合された(シナリオ3)ガソリン・プルームの中のBTEX成分のバイオ分解速度は、高い濃度のメタノールが存在することで大きく低下することとなる。BTEXバイオ分解の低下は結果的にBTEXのプルームの長さを伸ばすことができる。この有効なプルームの伸長に関する完全な評価は実施されていないが、これはメタノールが漏出した地下貯蔵タンクとガソリンが漏出した地下貯蔵タンクとの間の距離と、地下水の動きに関連した2つの漏出したタンクの配置の関数であると考えられる。

 

3.4 結論

 

米国環境保護庁(USEPA)の汚染防止および毒物局(The Office of Pollution Prevention and Toxics)によるリスク評価の指針を適用して、最近の研究はメタノールは大気中、土壌および水中で容易に分解され、残留する分解中間体を持たないことから、環境中に残留しないと結論づけている(ENVIRON、1996年)。大規模なメタノールの漏出の場合、メタノールは急速に低濃度(<1%)に希釈し、その後急速にバイオ分解されるだろう。もし洗浄措置がとられるとすれば、著しい希釈の前にメタノール・プルームを捕獲するために、その措置はガソリンの漏出の場合に比べより迅速なペースで開始される必要がある。しかしながら、メタノールのバイオ分解の相対的速度は、メタノールやガソリンの漏洩に対する積極的な洗浄時間よりも早い、自然界での洗浄時間に落ち着くと考えられている。

 

 

 

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